過去ログ - 咲「誰よりも強く。それが、私が麻雀をする理由だよ」
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789: ◆JzBFpWM762
2015/11/24(火) 19:44:16.84 ID:A0S2go5Qo
誠子「お、おい分かってるのか、私がその気になれば……」

淡「できないでしょ?」

 猫のように目を細め妖しげな光りを瞳に宿した淡がニヤと笑う。傍観する咲たちには何を指すやりとりか不明だが、誠子は「ぐっ」と押し黙り、苦々しく顔を歪める。

誠子「早く戻らないとまずいって、弘世先輩にめちゃくちゃ怒られるぞ?」

淡「でね、そのとき私は気づいたんだ。人間は記憶を蓄積する装置であるだけじゃなくて、思考を発生させる装置でもあるって」

誠子「聞けよ、ってか何の話だよ!」

淡「っべーだ」

 台詞に合わせて仕草を作り誠子をおちょくると、淡は咲のほうを向いてトトッと駆け足に歩み寄った。

淡「よしわかった、サキの気持ちを尊重しよう!」

 ひしと手を握られて咲の身体が震える。しかし、一転して心情を慮る発言。その言葉をかけられて咲の心にはわずかばかりの安堵が生まれていた。

 姉と縁があり、初対面での出来事、そしてよりによって白糸台の本拠地へと引き込もうとする彼女の強引さに恐怖にも似た苦手意識が芽生えていたが、彼女とて何がなんでも力ずくではない。そう認識して、咲も混乱から回復し我を取り戻しつつあった。

 姉の知人友人を前に平静ではいられない。だが、一方的に避けるのは悪いと思えるくらいには余裕を取り戻せた。握られた手もすぐに離されたからか明華も口を出さない。静かに状況を見守っている。

咲「大星さんは」

淡「淡って呼んで、愛称でもオッケーだよ」

 思い切って口を開くと呼び方の訂正を求められる。

 いきなり名前で呼ぶ。内気で人見知りな咲には抵抗がある。愛称など、もっての外だ。

 とはいえ、無理をするでもなく相手が望んでいるようだし、ネリーを『ヴィルサラーゼさん』、明華を『雀さん』と呼びはしなかったように、異国の人間を相手にすると思って無理矢理意識を切り替える。

咲「淡……さん」

淡「淡さん? アハハッ、なんか敬われてるみたい」

 呼称が琴線に触れたのか笑いこける淡。

淡「まずは好感度だね!」

咲「え?」 

淡「仲を深めてから誘う、そしたらオッケーの流れ。将を射んとすればまず馬!」

咲「あの、私たち買い出しの途中なんですけど……」

 表現の疑問には触れないでおき、とりあえず咲は自分たちの事情を伝える。
 まばらに通りゆく客、品出しする店員、彼らの視線をちらちらと感じながら冷蔵ショーケースがある一番奥の通路の端っこに直線状に並んで話し込む。その中心を陣取った淡は、藪から棒に奇妙なことを言い出した。


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