過去ログ - 咲「誰よりも強く。それが、私が麻雀をする理由だよ」
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798: ◆JzBFpWM762
2015/11/24(火) 19:53:23.89 ID:A0S2go5Qo
淡「今の言葉、テルーに言っとくね! サキが言ってたって話したらきっと効果あると思うんだー」

咲「ええと……、どうぞ?」

 波濤の勢いで進められていく話に押され気味に返す。話が変に伝わってややこしいことにならないか。そういった心配が瞬間的に脳裏をよぎるが、今の咲にはここに来るまでの間に肝を潰した分の落差に対する戸惑いが勝り何もできないでいる。――そう、咲は困惑していた。
 もっと緊張感のある話だと思っていたのだ。そしていま咲の心境は、何というか拍子抜けに脱力してしまっている。

 同時に、咲の中で淡を遠ざけようとする気持ちが少しずつ薄らいでいく。逼迫した警戒心がほんの少し緩み、覆いかぶさるようなクオリアから解放されて、いつも通りの、高校に上がってからのいつも通りに近い形へと意識が替わっていく。
 そんな中で、それとなく淡を見つめる。楽しいと感じているのだろうか。まるで気が合う級友とでも話を弾ませるかのように、にこにこと笑みを浮かべて人懐こく喋る彼女への疑問は尽きず、思い迷うばかりだ。

 何か、意図するところがあったのではないのか。今となっては無用になったとしか思えない警戒心を働かせて考えてみるも、今しているのはたわいもない雑談。咲には意味を見いだせない。強いていえば『最近姉や弘世という先輩に構ってもらえなくてご立腹です』という不満をこぼしているくらいで、そんなことをいわれても困るというのが率直な心情だ。
 姉の話とは名ばかりの世間話。不満を吐き出させてあげる程度の軽い相談事。緊張して思い詰めていた自分がばからしい。とんだ道化だ、と弱音をこぼしたくなる。張り詰める必要なんてなかったのではないだろうか。

明華「……咲さん?」

 表情のこわばった印象が弱まり、柔和にも近い面差しに変わるのを見てとった明華の慎重に窺うような呼びかけ。「ちょっとだけすみません」、咲は淡に断りを入れて振り向き、いつも通りを意識した柔らかな声で尋ねた。

咲「さっきの話……本当に大丈夫でしょうか」

明華「……寄り道で遅れるという電話のことですか?」

 咲たちはこの喫茶店に来る前、買い物に必要ない余分な時間をかけてしまうので前もって連絡しようとした。そして結局は明華の携帯端末で連絡してもらった。というのも、その段になって咲は携帯端末が手元にないことに気づいたからだ。
 咲はやってしまったと思った。咲の携帯端末は高校に上がってから母の勧めで持つようになったため、持ち歩く習慣がしっかりと身についていないのだ。
 とまれ明華に頼んで連絡してもらい、遅れてしまう旨を申し訳なさと共に伝えたのだが。その際旅館の練習室に忘れていった携帯端末があると知らされて納得すると同時に、「佐々野いちご」と名乗る人から電話があったのだ、ということを教えられたのである。
 急用かもしれないので携帯端末を取りに一旦帰り、確認してから淡との話に臨もうと咲は思ったのだけれど、


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