過去ログ - 咲「誰よりも強く。それが、私が麻雀をする理由だよ」
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826: ◆JzBFpWM762[saga]
2015/11/28(土) 22:37:46.71 ID:7Izo+H9No
咲「あの、これ……使ってください」

淡「え?」

 驚いたような淡の声。それもそうだろう。咲が抜きだし、淡に向けて差しだしたのはハンカチ。ただのハンカチだった。

淡「使っていいの?」

咲「それは、はい……使わなかったら意味ありませんし」

淡「ラッキー! ハンカチ持ち歩いてるなんて女子力高いね、サキー」

 そういえば、他の人は持っていたりしなかったのだろうか。差しだすか差しださないか、自分にとっては究極の二択から解放されてようやくそんなことを考え出している咲は、鬱々とした様子など欠片も感じさせない淡がハンカチを受け取るのを見届けてから、ぐるっと他の同席者たちを見渡す。そして知ったのは、咲以外の誰もハンカチを持ち合わせていなかったということだった。






 場所は変わってカフェの化粧室。

淡「しってる? トイレって、アメリカならレストルーム、イギリスならトイレットっていうんだよー」

 他の飲食店と比べて清潔に保たれていそうな感のあるそこの大理石――おそらく人工――の床に淡と向かい合わせに立って作業していた咲は、唐突に豆知識を披露する淡の言葉に作業する手を止める。

咲「ならしってましたか? 人工大理石には、大理石の粉や成分は全く入ってないんですよ」

淡「へー、しらなかった! 大理石ってあるのに?」

咲「そうらしいです。ちなみに、私もしりませんでした」

 「じゃあ引き分けだね」、と淡がうれしそうな顔をする。咲も微笑む。

淡「ずばり、サキってけっこう勝負好き?」

咲「え? ……どうでしょう」

淡「またまたー、やっぱサキとはなんか気が合いそうなんだよねー」

 何ら意識せず流れ作業的に歓談していた咲は、途中よくわからない質問があって動かしていた手を再び止めて思案したが、結局は曖昧に答えてお茶を濁した。

 先ほどからしている作業、というのはシミ抜きの応急処置のことで。ハンカチとティッシュと水があれば簡単にできる基本的なものだ。

淡「うーん、落ちそう?」

咲「フローズンオレンジはたぶん水溶性ですから……このあと、液体の洗濯洗剤と綿棒とタオルを使って本格的にやらないといけないかも」

 そう言って作業を再開しながら、一応、やり方を口頭で伝える。まず、シミの下にタオルをひき綿棒に洗濯洗剤を染み込ませたら――「うはあ」、説明が始まって早々、淡が奇妙な声をあげた。

淡「覚えらんない」

咲「音をあげるのが早すぎます」

 明らかに覚える気がない。咲はそう感じた。苦笑をこぼしながら「でも」、と継ぐ。

咲「応急処置でもはた目に目立たないようになってきましたから、あとはお洗濯でいいかもしれません」

 「もちろん、気になるならちゃんとしたやり方で細かく汚れをとったほうがいいですよ」、と付け足しながら、どうしてかぽけっとした淡を見つめる。なんだろうか。首をかしげる。



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