過去ログ - 咲「誰よりも強く。それが、私が麻雀をする理由だよ」
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◆JzBFpWM762
[saga]
2015/11/28(土) 22:36:35.82 ID:7Izo+H9No
「お、お待たせしました! アイスモカになります!」
「すみませーん、注文したいんですけどー」
「はっ、はい、ただいま!」
「このラテアートとーフローズンとー」
「注文したのまだですかー?」
「すぐお持ちしますっ!」
「――お待たせしました、ご注文の」
「あれ注文したのと違うんだけど」
「ええっ! わ……もも申し訳ありません!」
頭の上に乗ったベージュのハンチング帽が落ちないのが奇跡的に思えるほどせせこましく歩き回る店員が、目を回して対応に追われている。そしてバッシングしてきた大量の皿やシルバーやコップ類をトレーに乗せて運びながら厨房に向かって歩いていく途中。
「どうしよう……どうしよう……」
「あっ、おかわり――」
「ああああああああっ、一人なんて無理ですよおおおおおおお!! ――あっ」
わー、きゃー、どーん、がっしゃーん。ふざけた表現だが、まさしくそんな感じのコミカルな絵面が広がっていた。
誠子「あー……ありゃ時間かかるぞ」
目を覆いたくなる惨状を目にした一同から誠子が諦観したようにつぶやく。わずかな間の出来事だったが、信じられないような衝撃と悲観的な現実をもたらしていた。
淡「シミが……」
誠子「……替え、あるか?」
淡が首を振る。誠子と淡がどんよりと会話し、依然として軽快な音楽が流れる中、咲はスカートのポケットに突っ込んだ手をぎゅっと握る。――これを渡したら、何か意味が生まれてしまうのではないかと案じていた。咲は恐怖する。人ではなく物事を疑い出したらきりがない。何度も、何度も考えて、未だに直らないこの癖が、淡との距離が一線を越えることを、今こうして逡巡していることを、拒もうとする。それは意識下を越えて無意識下の働きに達していた。
けれど。
淡はこの後試合を控えている。白い生地の制服にフローズンオレンジの鮮やかなシミがついた格好で、テレビ中継もされる場所に向かわせていいだろうか。人によっては小さなことと笑うかもしれない。でも。公衆の面前で女の子が身だしなみを気にする心境を咲は決して無碍にはできなかった。
だからこれからするのは当たり前のこと。高校に上がってから触れあってきた人たちとの思い出が曇らせていた目を晴らす。そして心を決める。そうして覚悟した咲の前に、かつて抗えなかったその懸念は、どれほどの力も持たなかった。
ごくりと唾を飲み込む。嚥下した舌の根が恐怖に屈して回らなくなってしまわないうちに、スカートの中から折り畳まれた布を抜きだして口を開く。
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