過去ログ - 咲「誰よりも強く。それが、私が麻雀をする理由だよ」
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878: ◆JzBFpWM762[saga]
2015/12/15(火) 23:42:54.12 ID:Y8k0m8hzo
「よかったら今日一緒に打とうよ。ネリーじゃないとってわけじゃないでしょ?」

質問の意味を察して、目をしばたたかせる。

「留学生四人と辻垣内さん、私のメンバーで交代に卓を囲む練習があるんじゃ?」

「あー、そういうことじゃなくてさ」

手で頭を掻くような仕草をするハオ。

「咲と智葉以外の日本人部員を入れて打つ練習あるでしょ?」

臨海の麻雀部では、対局の面子の組み合わせを色々と変えながら打つのが主流で、留学生と一部のメンバーだけ固定して卓を回すといったやり方はとらない。

たとえば、留学生二人日本人部員二人の卓、留学生一人日本人部員三人の卓、時には留学生クラスの部員四人の卓、といったように様々な組み合わせで回していく。

中でも、現在の練習方針としては留学生クラスの部員二人にそこそこ実力のある日本人部員二人を加える、といった卓を比較的多く用意し、留学生のレベルアップに務めながら日本人部員全体の底上げにも目を向ける……といった練習法が採用されているのだった。

そして、留学生クラスの部員――その一人に咲は数えられている。他には智葉だけ。

「……はい。だいたい『上座役』の二人はペアを組む形になってますね」

上座役、というのは。一般の日本人部員が卓に入るとき、留学生クラスの部員を指してそう呼ぶ。

入学して間もなくされた部員一同を前にしての監督の説明曰く、留学生クラスの卓に入る一般の日本人部員は胸を借りるようなものだから、その卓の留学生クラスの部員を『上座役』と呼称する……これは長年の伝統とらしかった。

「うん、だから……よかったら私と組まない?」

ハオは辺りをきょろきょろと確認するように見回して、

「ネリーは今日まだ来てないみたいだし、さ」

咲は黙り込む。そして、辺りに視線をめぐらせてみる。

ネリーは見当たらなかった。手紙を出しにいって遅れているのだろうか。

「そう、ですね。わかりました」

今日はよろしくお願いします、とぺこりと頭を下げて言う。ややあって頭を上げると、

「……」

無言で見つめてくるハオと目が合った。

「あの……?」

なんとも微妙そうな表情を彼女はしていて、もしかしてしらない間に怒らせてしまったのだろうかと声をかけると、

「ああ、ごめん。大したことじゃないんだけど」

彼女は、はっとしてから断りを入れて、

「いや……同じ一年なんだし敬語とかそんなしなくてもいいんじゃないかってね」

同級生にも度々されてきた質問をしてくる。自分の表情がわずかにこわばるのを咲は感じた。

「そう……ですね、そうなんですけど、これがくせになってしまっていて」

ハオも、どちらかというと礼儀正しく分別をきっちり守るタイプのようだが、堅苦しさというのはあまり感じさせない。少なくとも、咲のような同級生に対しては割とフランクだしフレンドリーであるように思う。

他方、ほとんど全ての人に対して折り目正しく接しようとする咲は几帳面といっていいほどだ。ハオも同級生など大抵の人と同じようにそこが気になったのだろう。

勿論ハオの今の言葉も同級生と同様、糾弾する風ではなくたしなめるように言ってくれるものだが、これを変えたくない咲としてはそうしてたしなめる気遣いをさせるのも、付き合ううちに距離感を心配させるのも心苦しいものだった。

だから――あまり人とは関わらないようにしたい。

それが、人間関係について咲が出した答えだった。


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