過去ログ - 咲「誰よりも強く。それが、私が麻雀をする理由だよ」
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◆JzBFpWM762
[saga]
2016/01/13(水) 19:28:41.41 ID:KgtP/2z6O
「あの、すぐに拘束を解いてくれたし何か事情があるみたいなので通報したりはしませんが……」
「えっ、マジ? 通報しないの?」
いくぶん落ち着きを取り戻しつつある咲から、警察沙汰にはしない、そんな言葉が出てきてアフロの中年男……アフロは目を軽く見開いて嬉しそうにする。
「ラッキー!」と口に出さずとも高々と突き上げられた片腕が彼の心情を物語っていた。
そして彼……アフロはふっと頬を緩ませて優しげな表情を浮かべると、
「君……優しいね」
捉えようによっては口説き文句のような言葉をさも感慨深げに漏らす。
「お世辞はいいです。それに、関わり合いになりたくないだけですよ」
「いや、わかるよ。君はこんな私にも同情してくれてる。いい意味での同情だ。同情って言葉のイメージが悪いなら、被害者感情に寄り添った姿勢……だとか言い方は何だっていい。大切なのは君の気持ちだ」
飾り立てる言葉など、本質的には大した価値を持たない……という風なことを言いたいのだろうか。ますます口説き文句じみてきた。
咲に歳上の男性を特別好む嗜好はない。先ほどまでの軽薄な態度をすっぱりとやめて真摯に伝えようとする姿勢には比較的好感が持てたが、それは先ほどまでとの対比の問題で、総合的に見れば咲の中での印象は「変わった変質者」、その程度のものだった。
そこまでを胸の裡で振り返って、咲は嘆息する。
「とにかく、ここは女子トイレなんです。あなたみたいに男の人がいたらいけないっていうのはわかりますよね?」
仮にも歳上の人間に対して慇懃無礼な言い方をするのはやはり「女子トイレに男の人がいる」その一点に尽きた。
咲は社会の常識やマナー、規範といったものを絶対視したり信仰するといった思想はないごく普通の中立的な女子学生に過ぎない。しかしそれでも、女子トイレに男性が入り込んでいる。それは、どうしても嫌悪感があった。
「うーむ……」
だが、警告めいた注意を受けている当の本人はと言うと何やら難しい顔をして、無精髭の生えたあごに指先を当てて考え込んでいる。こんな状況なのに終始恥じ入る様子もない。
どころか、考え込んだ姿勢のまま、咲の事をためつすがめつ、不躾にもとれる遠慮のない視線で頭のツノからつま先までじろじろと観察しているではないか。一体、何を考えているのだろう。反省の色など見当たるはずもない。
「あの……」
非常識に見える男の反応に、辛抱強く接していた咲の堪忍袋の緒が切れそうだ。――そんなとき。
「よし、この子でいこう!」
唐突に男が声をあげた。こんな状況なのにはきはきと、あごに当てていた手を今度は握りこぶしに変えて胸の前で小さくガッツポーズ。
「君に決めた! 売り子……いや、妖精役も頼みたい! 君、お願いできないか!?」
「は……?」
あんぐりと口を開けてしまった咲の反応は至極当然の反応と言えただろう。意味がわからない。文脈がない。説明も不十分。
こんなのでまともな理解ができたらその洞察力は人並み外れている。
未だ呆然とする咲に、アフロの男はびっと格好つけたポーズで指を突きつけた。
「まずその声! 大人気ノベルゲーム『Fake/stay あばろんっ』に出てくるヒロイン『トーサカ・リンチャンサン』にそっくり!」
「りんちゃんさん?」
「そう、マジカル八極拳の使い手……あかいあくまの異名を持つ、素晴らしい女性。――遠坂さんは裏表のない素敵な人です」
何だかすごそうな肩書の女性のようだ……でも、何で後半は褒めているのに死んだ魚のような目で棒読みなんだろう。咲は首をかしげる。
「次にそのファッション! 淡いピンクのカーディガンに青いワンピース……ボトムスは脚線を綺麗に見せる細身の紺色デニム!」
間髪入れず、死んだ目から復活して抑揚のついた声で次の褒め言葉らしきものが切り出される。
「一見して普通の春の女の子の装いといった感じだが、ワンピースにこだわりがある……ガーリー系に見えない程度に所々フリルやレースが控えめにあしらわれたワンピース……目立たないが、その縫製の質にも目を瞠るものがある」
彼が口にしているのは、今の咲の服装そのものだ。寸分の違いもない、ように咲には思える。実際、彼の言うように漠然とワンピースでの強調を意識していたし、実はこれはそこそこ有名なブランドの服で縫製の質に対する称賛も的を射ているように感じられた。
何より、ファッションなどの嗜みに疎い自覚があり軽いコンプレックスも密かに感じている咲としては、服装を褒められるのはまんざらでもなかった。
そわそわとして意味もなく横髪を弄りだす咲。口元が少し緩んでいる。こんな状況なのに。ちょろい。
さらに、
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