11:名無しNIPPER[saga]
2015/03/17(火) 14:01:05.83 ID:pbZE6X4vO
幸い、オーディションには合格したが、事情を話したらすぐに事務所から両親に連絡が行き、二日とたたずに母が迎えに来てしまった。
こっぴどく叱られるかと思っていたが、母の口から発せられた言葉は、私の予想していたものとはまったく違うものだった。
好きにやりなさい、と呆れた様子で母は言った。愛想を尽かされたのかな、と当時は思ったものだったが、今にしてみれば、頑なに反対していた父をなんとかなだめて了承を取り付けたであろうことは、想像に難くなかった。
その後、私は一旦青森に帰り、転入の手続きや友達へのあいさつなどのもろもろを済ませて、三月の半ばからあのアパートで一人暮らしを始めたのだった。
家族や友だちとの別れはつらいものではあったが、自分の夢を叶えるための第一歩を踏み出せるという喜びに比べれば、それらは瑣末なものだった。
そして再び東京に行くまでの三ヶ月と少しの間、結局父と言葉を交わすことはなかった。ケンカをしたわけではなかったが、私は父を避けていたし、父は私を避けているような気がした。
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