8:名無しNIPPER[saga]
2015/03/17(火) 13:57:45.60 ID:pbZE6X4vO
「ほんと、懐かしいなあ……ここらへんって小学校の通学路だから、毎朝子どもたちの声で目が覚めて……」
聞かれたわけでもなしに後輩に向かって話す。
「普通のアパートと同じでキッチンは部屋ごとにあるんだけどさ、それとは別に食堂があって、平日はそこでご飯を食べてたんだ。毎週金曜はカレーの日だったんだけど、バイトを入れてたからほとんど食べられなくて……」
一人で思い出に浸っているうちに、後輩のあいづちは次第に気のないものへと変わっていった。
無理もない。自分自身に置き換えてみれば、よく分かる。初めてプロデュースを担当したアイドルの思い出話。プロデューサーの話、もっと真剣に聞いてあげればよかったかな、と悔やむのは、自分が彼と変わらない年になってからだった。
「……行こうか」
「もういいんですか?」
「うん」
溜め息交じりに言って、再び車に乗りこむ。後輩もそれに続き、静かに車を発進させた。
サイドミラー越しに、アパートを一瞥する。変化の中にあって変われずにいるその姿は、ひどくみじめだった。
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