9:名無しNIPPER[saga]
2015/03/17(火) 13:59:08.70 ID:pbZE6X4vO
かつて住んでいたアパートの前の通りを十分ほど歩いたところに、小さな公園がある。
ここも、あの頃と変わっていなかった。ブランコがあり、滑り台があり、シーソーがあって、そして、桜の木があった。
「ごめん、ちょっと止めて」
「は?」
「いいから」
「はあ……?」
シートベルトを外して、小銭を後輩に渡した。
「飲み物でも買ってきてよ。そこらへんの自販機でさ」
後輩を邪魔者扱いするつもりはなかったが、今は少し、一人でいたかった。思い出に浸るには、やはりその方がいい。
車を降りて、公園の中に入る。桜の木に向かって歩きながら、そうだった、そうだったとあらためて思い出す。
三月の終わりだ。
桜の木が私を助けてくれた。
夜だった。
ひとりぼっちだった。
三十一年の人生の中で、いちばん孤独だったのは、あの頃だった。
24Res/16.22 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。