過去ログ - 浜風「私達はきっと人間の出来損ない」
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33: ◆XTxK6n/lbg[sagesaga]
2015/03/21(土) 01:09:45.43 ID:1RmluRqaO
執務室に辿り着くまで、二人は様々な話をしたという。
鎮守府での生活はどうか。何か困っていることはないか。不便をかけていないか。仕事は辛くないか…
自分から会話を切り出すのが苦手な潮さんに、提督が次々と質問をして会話が途切れない。
潮さんはその時間がとても楽しかったのだという。

「それは、私がこの鎮守府に来て以来初めて楽しいと感じる時間でした」

うっとりとした表情で語る潮さんのその顔は、幼いながらも私には雌のそれに見えた。
自分でも訳がわからないくらいに苛立ち、それを誤魔化そうと茶々を入れる。

「なんだ、やっぱり惚気話じゃないですか」

顔を真っ赤にして否定する潮さんに、馬鹿馬鹿しいと告げてその場を離れることも考えた。
だがそれをしなかったのは、私が卑しい女だったからなのだろう。

「それで、それ以降潮さんは提督のことが気になっていたということでよろしいんですね?」

「ええ…それ以降、お顔を合わせる度に挨拶くらいならできるようになって、そうやって言葉を交わす度に思いは強くなる一方で…」

つまり、彼女が一方的に提督のことを慕っているということだ。
理由も実に思春期の子供らしい。ただ単に、自分に優しい年上の男性が身近に一人いたというだけのことだ。

年頃の女ならよくある話だろう、と内心冷めた思いで彼女の惚気話の続きを聞く。
遠征で成功し、報告の際に褒められた話。任務で中破し心配して貰った話。訓練を見学に来た提督に隊員全員がアイスを奢って貰った話…
正直、鎮守府にいる艦娘なら誰でもその程度は接点があるのではないかといったレベルの話ばかりだ。

「あ、えっと…すみません、勝手に盛り上がってしまって…」

盛り上がるというほど興奮した口調にも聞こえなかったが、彼女の中では盛大に盛り上がっていたのだろう。
(いつもより少しだけ早口だったのは否めないが)
退屈そうな私の顔を見て、彼女はまた顔を朱に染めて、恥ずかしそうに俯いてしまった。
しばしの沈黙がそこにあった。


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