6: ◆KalAsNXPcs[sage]
2015/03/18(水) 10:58:20.86 ID:GRfcXm90o
「響、武運長久を祈るよ」
「朝霜こそ……」
と響が言った時には、朝霜は追い立てられるように踵を返して港へ向かっていた。
朝霜の言葉にならない返答が、音もなく木霊した。
7: ◆KalAsNXPcs[sage]
2015/03/18(水) 11:11:07.23 ID:GRfcXm90o
暁がソロモンの海に消える前夜。
雷がグアムの沖に消える前夜。
電がフィリピン海に消える前夜。
鎮守府に残る第六駆逐隊の僚艦で、お守りを渡したことが思い出された。
お守りに無事帰還の願いを込めても、心いっぱいの見送りをしても、
8:名無しNIPPER[sage]
2015/03/18(水) 11:16:50.00 ID:ZjzVSARno
期待
9: ◆KalAsNXPcs[sage]
2015/03/18(水) 11:25:23.82 ID:GRfcXm90o
四ヶ月後の敗戦の瞬間も、響は自室から桜の木を眺めていた。
それは葉桜の身に陽光を目一杯に受け止めて、美しく、ただ毅然と立っていた。
春は静かに死にゆき、梅雨は水たまりを残して駆け抜け、夏が盛りを迎えている。
さくらんぼを渡しそびれた朝霜は、あの日を最後に帰って来なかった。
10: ◆KalAsNXPcs[sage]
2015/03/18(水) 11:36:29.60 ID:GRfcXm90o
その時、そよと吹く風に桜の葉が揺れ、何かが紅くきらめいた。
さくらんぼの果実だった。
響はあの日と同じように採って口に含むと、
完熟の甘みの中に強靭な生命を感じた。
11: ◆KalAsNXPcs[sage]
2015/03/18(水) 11:39:07.01 ID:GRfcXm90o
――鎮守府の桜の木は、夏の陽ざかりの日を浴びてしんとしている。
12: ◆KalAsNXPcs[sage]
2015/03/18(水) 11:40:47.52 ID:GRfcXm90o
終わりです。
特攻や終戦の寂寥感が出せたらいいなと思って書きました。最後はとある小説のリスペクトです。
時間があれば、長めのものも書いてみようかなと思っています。
ありがとうございました。
13:名無しNIPPER[sage]
2015/03/18(水) 13:57:33.90 ID:WHKILb/lo
響のさくらんぼと思って開いたら重かった
14:名無しNIPPER[sage]
2015/03/18(水) 15:52:18.10 ID:wE6Uw4OAO
乙 戦艦越後みたいな感じだな
15:名無しNIPPER
2015/03/18(水) 18:18:19.32 ID:Z1jHwPGfO
いいものを読ませてもらった
乙
16:名無しNIPPER[sage]
2015/03/27(金) 15:41:52.33 ID:2DCLMetIO
新作はいつぐらいになりますかね
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