過去ログ - 戦艦水鬼「光溢れる水面に、わたしも」
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12:名無しNIPPER[saga]
2015/03/24(火) 13:55:08.19 ID:qsbs6+9v0

 だが、戦いを続ける限りは、敵の姿を見ていることができる。
 それが戦艦水鬼にとって唯一無二の救いだったといってもよい。

 あまりにもうらやましい艦娘の姿。

 それはあまりにも美しく。

 あまりにも輝いていて。

 ……いつまでも見ていたくもなる。

 艤装が砲を放つと、ついに反動には耐え切れなくなったようで、右腕が音と共に弾けて消えた。砲弾は巨大な水飛沫、そして津波と共に海中へと消え、降り注ぐ水滴を浴びながら一人の駆逐艦が彼女の前に立っている。
 目から頬へと水の流れたあとがある。飛沫だろうか? それとも?

 駆逐艦が何かを呟いた。既に目も、耳も、頭も確かではない戦艦水鬼にとって、それは到底聞き取れる代物ではない。
 セーラー服がはためいて、お下げが揺れて、九四式高射装置が鈍く光って。
 
 魚雷がついに――やっと――戦艦水鬼の艤装と体を崩壊させていく。

 艤装はもはや艤装の体を為してはいない。彼女は水上へと放り出され、満足な浮力も得られずに、いまゆっくりと体が傾き始めている。
 目を細める戦艦水鬼。気づけば海の向こうが濃紺から紫へ、そして桃色へと変わっているのが見えた。太陽の姿は見えないが、存在だけはわかる。

 敵影十二隻は日の光の中に、そして煌く目映さの中に屹立していた。



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