5: ◆2YxvakPABs[sage saga]
2015/03/26(木) 00:48:42.69 ID:avES/eip0
「あー、いいですいいです。それで? 結局アイドル力ってのはなんなんですか?」
「アイドル力とは、自身や個性を輝かせる力のことです。それを奪われた人間は、堕落し、自身を見失います。すなわち、個性の消失。つまり、人としての死です。全世界の人々からアイドル力がなくなれば、それはすなわち無個性のはびこる混沌の世となります」
これまた重い話だな、と菜々は軽く目眩がした。
「っていうか、妖精になってからのプロデューサーめちゃくちゃ喋りますね。普段の寡黙キャラどこ行ったんですか」
「いえ、そんなことはないです。あ、そんなことはないですピー」
「あんた今の今まで語尾付け忘れてたなっ!!! キャラ作りずさんかっ!!!」
菜々はプロデューサーを指差して批難した。
プロデューサーのペースに乗せられて、普段のキャラの面影もない菜々だが、そこはツッコんではいけない。
彼女はキャラ作りがずさんなわけではない。ただ、目の前の事が非日常過ぎて動揺し、混乱しているだけなのだ。
決して、キャラ作りがずさんなわけではない。
「マースコミディアはこの世界にも魔の手を伸ばしています。それを阻止するためには、プリキュアが必要なのです。あ、なのですピー」
「……もうツッコまなくてもいいですかね」
語尾を付けるのに慣れてないのか、はたまたこちらの世界に長く居すぎて語尾をつける習慣が消えたのかは分からない。
だから菜々も深くは追求しなかった。
「実を言うと、業界の8割以上のアイドル事務所は、この世界でも強力なアイドル力を持つ少女たちを保護するために存在します……ピー。また、プリキュア候補を探すためのものでもあります……ピー」
「え、そうなんですかっ?」
思いもよらぬ事実に驚きの声をあげる菜々。しかし、裏を返せば、菜々自身もそのアイドル力とやらが高いということだ。
そのことを嬉しく思わなかったと言えば、嘘になる。
ボワンッと再び元の高身長なプロデューサーの姿に戻った。目の前で。
それを見て、改めてドッキリではないなと痛感する菜々だった。
「プリキュア……やっていただけますか?」
見下げていた視線が一気に上を向く。190は超えているであろう巨躯からの誘いは、非常に威圧感があった。
ふと、初めてプロデューサーと出会った時の事を思い出す。
初めての時も、こんな感じだったと菜々は苦笑した。
結局、何者であってもプロデューサーはプロデューサーだ。
「分かりました! ナナ、プリキュアになりますっ! キャハッ」
顔の横にピースを作り、全開の笑顔で了承する。
どんな理由であれ、プロデューサーは菜々を頼ってきたのだ。その事が、どこか嬉しかった。
「よかった……です。有難う御座います、菜々さん」
「それでその……なんでナナ……だったんですか……?」
「……笑顔、です」
「嘘だッッッ!!!!!!!!」
このプロデューサー、理由を尋ねるとすぐこれだ。
本当は、何も考えてなくて、ルーレットか何かで適当に決めたのではないだろうかと思ってしまう。
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