過去ログ - 櫻子「めぐみの雨と、恋で咲く花」
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2:名無しNIPPER[sage]
2015/03/30(月) 17:26:34.84 ID:JxUSEnW0o
「模試の結果が、右肩あがりなんだ」―――夜十時、珍しく嬉しそうな声が電話口から届いたこともあった。

撫子と付き合うようになって決めた、二人を密かに繋ぐ夜十時の電話は、受験期真っ盛りの冬になると当然数を減らしたが、それだけに一回一回の電話が愛おしく感じるようになった。

「おめでとう」「すごいじゃん」「撫子なら絶対受かるよ」電話越しではそんなありきたりのことしか言えなかった自分だが、まるで自分の成績が飛び上がったかのような嬉しさを感じていた。ここでもまだ、顔を覗かせた芽は育つことなくおとなしくしていた。



年が明け、センター試験が終わったころに、芽は急速に成長した。受験生が学校に来ることがほとんど無くなったのだ。

私は孤独を痛感した。学校に来れば当たり前のように皆と会えると思っていた、その常識が壊された。

学校には私以外にももちろん生徒はいたが、二次試験等を控えた学生は既に自宅での勉強体制になっていた。私立大学に関しては受験日がバラバラだし、もうその段階の高校生活は私の知っている高校生活ではなかった。卒業という駅に向かう列車に乗って、おとなしく座っているだけだった。

冬という季節もあったからか、感じる寂しさはしんしんと降り積もる雪のように、静かに確かにつのっていった。受験日が刻一刻と迫る緊迫した思いをしていたであろう皆には申し訳ないが、私はさっさとその日が過ぎてくれるのを待っていた。



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