100: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:48:55.20 ID:KlUD8s2/0
岩が生え始めて三分後、スポーツカーは運転をやめていた。道がほとんどなくなってしまったからである。
視界のほとんどが岩で埋め尽くされて、引き返すこともできなくなっている。一応道はあるのだ。スポーツカーの前に一本道である。進めばいいところだけれども、少し気が引けるのだ。
というのが、一本道の向こうには円形の空間がある。半径十メートルほどの円形の空間だ。ここは普通の草原だった。
101: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:52:28.92 ID:KlUD8s2/0
京太郎を見て、ディーはこういった。
「わかった。それじゃあ、いこうか。
もしものときは心配しないでいいよ。俺がしっかり守る。これでもめっちゃ強いからね」
102: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:55:57.32 ID:KlUD8s2/0
二人が近づいてくると怪しい女性は動き出した。まず怪しい女性は京太郎を指差した。
右手の人差し指を京太郎に向けて、ゆらゆらとさせている。前髪が長すぎるために表情はさっぱり見えない。
しかし前髪の向こう側で輝く赤い目が見えた。その赤い目が京太郎を前にして形を変える。光の形からして笑っている。
103: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:59:09.18 ID:KlUD8s2/0
京太郎が近寄ってくるのを見ていた怪しい女性は笑っていた。うれしいらしい。引きずっている長い髪の毛が笑うたびにゆさゆさと震えている。
人型のモップが震えているような滑稽さがあった。しかし、女性の風貌が、特に前髪の奥で光り輝いている赤い目が、馬鹿にさせてはくれない。恐ろしくてしょうがない。
笑い声も金属的な響きが多く含まれている。声を出すのもへたくそだったが、笑い方もへたくそだった。
104: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 06:03:34.64 ID:KlUD8s2/0
激痛に一瞬京太郎は顔をゆがめた。痛くてしょうがなかったのだ。しかしほんの一瞬のことだ。一秒もない空白の時間。しかしこの空白の時間を怪しい女性は見逃してくれなかった。
一瞬気を抜いた京太郎の右手をつかみにかかったのだ。怪しい女性からしてみれば、京太郎の手を握るのが目的なのだ。自分からのこのこやってきた京太郎を見逃す理由はない。
105: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 06:05:44.91 ID:KlUD8s2/0
京太郎の胴体に腕を回していた怪しい女性は更に十秒ほど抱きついたままだった。
細くて白い両腕を京太郎の胴体にまきつけたまま、じっとして動かなかった。
抱きついて二十秒が過ぎるというところでいよいよディーが動き出した。
106: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 06:10:28.42 ID:KlUD8s2/0
ディーにこのように励まされて京太郎はうなずいた。まったく納得していないのが誰の目から見ても明らかである。
苦虫を噛み潰したような顔をしている。ディーのいうとおり道が開けたのだから、問題はない。
マグネタイトを少し支払うだけで道が開けるのだから、これでいいはずだ。喜ぶべきことだろう。
107: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 06:13:59.25 ID:KlUD8s2/0
申し訳なさそうな顔をしている虎城に京太郎はこたえた。
「ぜんぜん気にしてないっすよ。話に聞く魔人は結構やばいみたいですし、警戒されてもしょうがないなぁって」
虎城の話を聞いてやっと京太郎は理解してうなずいていた。京太郎は虎城が自分を見ておびえていたのを思い出した。
108: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 06:14:45.01 ID:KlUD8s2/0
ここまでです。
109:名無しNIPPER[sage]
2015/04/14(火) 08:38:56.78 ID:I2Jpnn71O
乙でした
110:名無しNIPPER[sage]
2015/04/14(火) 12:35:34.42 ID:nZitnE4fO
謎の女かわいいなぁ、乙!
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