過去ログ - 京太郎「限りなく黒に近い灰色」
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127: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/21(火) 01:59:50.52 ID:8uChUkcw0
 ディーの話を聞いていた京太郎は、表情が硬くなっていた。恐れたのだ。京太郎が恐れたのはマグネタイト器量の話ではない。

それはどうでもいいことだ。

 現世がかなり危ういバランスの上に立っているということを理解して恐れたのだ。

 ディーの話が本当なら、いつどのタイミングで世界がひっくり返るかわからない。

何せ、悪魔召喚プログラムがインターネット上で公開されているのだから、誰でもサマナーになれる。携帯電話で当たり前のように作動するのならば、誰でもサマナーだ。

 ということはつまり、きっかけさえあれば誰もが軍隊を持つ状況になる。マグネタイトさえあれば、大量の悪魔を呼べるのだから、一気に数をそろえられるようになる。

数の暴力はいまだに現役だ。一人の天才的な戦士よりも百人の凡人が集まっているほうがはるかに強い。現実の軍隊の力も、警察の力も、いってみれば数の暴力で成り立っている。

 この、人の数の暴力が通用しなくなる。実際、人の手が足りない本屋で造魔をつかっていたおばあさんがいた。あれをほかの組織で応用すれば、まったく人の手というのはいらなくなるだろう。

造魔という簡単に手に入る悪魔でさえ、普通の人間よりもはるかに強いのだ。

「戦闘用に調整された造魔」というのをたくさん用意できるのならば、それこそ国相手に戦うこともできるだろう。

 それこそ松常久のようにヤタガラスを裏切るものもいる。何がおきるかはわからない。

 これが個人の問題なら、どうにかなる。個人を始末すれば終わる。ただ、インターネットで世界に広まったのがまずい。

世界に広がったということはつまり、ほかの国家もほかの人種も、抑圧されているものたちも、悪魔を使えるようになったということだ。

才能を持たない個人がサマナーになれるのだ。復讐の機会を狙っている抑圧された少数者たち、国家の上層部にいる者たち、才能を持った個人が使えない理由がない。

 武器を捜し求めているものたちが見逃す理由がないのだ。間違いなく把握したことだろう悪魔が新しい力になると。

 京太郎はこう思ったのだ。

「次の世界大戦は、悪魔たちが乱舞する神話の戦いになるな。どのタイミングで始まるのかはわからないが、アインシュタインの予想が現実になりそうだ」

 京太郎の顔色が悪くなったが、ディーは更に話を続けた。

「とある幹部の提案に、ヤタガラスの幹部五十名は数名を除き賛成した。なぜなら、たった一人の人間を生贄にささげることで超強力な霊的国防兵器「九頭竜」を使役できるようになるのだから。

 生贄にささげられる姫の関係者はかわいそうではある。もちろん姫もかわいそうだ。

 しかし日本国民全てが幸せになれるのならばまったく問題ない選択肢だった。どこかの誰かが死ぬことで、自分たちの命が助かるのだから喜んで犠牲にするだろう。ごく自然な判断だった。

 だが、姫の家族はうなずかなかった。自分の大切な子供だ。国家のためだといわれたところでうなずけるわけがない。

自分の子供を奪おうとするのだから、悪党の戯言といわれてもしょうがない。他人の集合体である国家よりも家族を愛し優先する。これもまた自然なものだ。

 ヤタガラスがいけにえに捧げると決定を下すと、姫の両親は姫を連れて逃げ出した。しかし相手はヤタガラス、国家そのものだ。逃亡も長くは続かない。

 運よく一般人に拾われて、『破門された十四代目の一番弟子ベンケイ』のところまで逃げ延びたが、そこで十四代目葛葉ライドウと『二番目の弟子ハギヨシ』に追い詰められ、状況が変わり始める。

 まぁ、ここからはよくある話さ。たいしたことはない。二番目の弟子ハギヨシはヤタガラスの決定に反して動き始め、暴れまわった。

 ヤタガラスにハギちゃんはこういったのさ。

『責任を放り出してガキにすがるな。サマナーが神に頼るな。戦え、自分の手で守れ』

 ヤタガラスは実力主義の世界。ボスとボスの相談役は黙ってみているだけだと、よく承知していたハギちゃんは自分の信念を通すために、カラスとキツネを始末した。

 結果、霊的国防兵器『九頭竜』計画は、永久封印。

 計画立案者の幹部に協力していた外部組織の教主一名と構成員は全員処刑。

立案者の幹部含め、五十名いた幹部を三十九名まで減少させた上でハギちゃんは幹部の座につき、無理やりに決定を撤回させた」



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