過去ログ - 京太郎「限りなく黒に近い灰色」
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173: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 02:07:12.52 ID:Z22ZBlJ80
ここまで話をした虎城に、京太郎はこういった。

「松 常久の息がかかったヤタガラスのサマナーに攻撃されたんですか? 子飼いのサマナーまでヤタガラス?

 裏切り者が多すぎるでしょ、大丈夫なんですかヤタガラス?」

 説明をしてくれた虎城から京太郎は視線を切った。もう目を見ている必要はないと判断したからである。

 京太郎の本当の疑問

「明らかになっていない内通者」

の存在には答えが出ていないけれども、それはまた別にいるのだろうと納得した。

 そして、京太郎は自分の判断を下した。白だ。虎城は白である。これで間違いであったとしても後悔はないだろう。はずれであれば、自分が馬鹿だったというだけのことですむ。京太郎が虎城に疑問をぶつけたのは、信じたかったからである。納得できる理屈を話してくれたら、それだけでよかったのだ。


 おおよその答えにたどり着いた京太郎が納得したのを見て虎城はうなずいた。そしてこういった。

「まぁ、わかるわよね。そういうことよ。

 松 常久を探っていたら、前線で内偵しているサマナーと後方支援チームがヤタガラスの別部隊に襲われて壊滅。

 襲撃を受けた混乱の中でどうにか自分の異能力を使って逃げ延びて、今ここにいるってわけよ。

 でも、内偵のサマナーは優秀だったわ。襲撃前に松 常久の証拠固めはきっちり済ませてくれていた。後は証拠をライドウに渡すだけ」

 京太郎が納得したのを見た虎城はほっとしていた。京太郎が自分のことを信じてくれたと虎城は見抜いたのだ。これは虎城の観察眼が人よりも優れているからというよりは、京太郎が非常にわかりやすく集中力をきったのが原因である。

京太郎は自分の集中力を上手く制御できていない。そのため、虎城から見れば京太郎が疑っているとか、信じてくれているというのは手に取るようにわかるのだった。雰囲気の問題だが、迫力が違うのだ。

 そして今、京太郎は完全に集中を切って虎城を受け入れていた。あまりにも簡単に受け入れてしまう京太郎を見て

「悪い人にだまされたりしないだろうか」

と虎城はすこし不安になった。


 虎城の話を聞いて納得した京太郎はこういった。

「その証拠とやらを虎城さんが握っている。だからなんとしても松常久は消したい」

京太郎は虎城の話を信じていた。もう疑ってはいない。疑問はとっくに晴れたからだ。まだ隠している部分があるけれども、それは仕事上の問題だからどうでもよかった。話せないことくらいあるのわかるのだ。

 抱えていた疑問がなくなった京太郎は一人でうなずいていた。また、このようなことを考えていた。

「ライドウが命じた内偵の結果が黒である証拠があれば、消しにくるのは当然だろうな。携帯電話の中にでもデータを転送しているのか?」
と。

 そしてそんなことを京太郎が考えていると虎城はニコニコしながら自分の頭を指差した。

「そうね、でも物体としてではないわ。ここに、詰め込んだのよ」

細い人差し指で、虎城は自分の頭をつついていた。京太郎に見せている笑顔は無邪気なものであった。というのもこの話をすれば、間違いなく京太郎が驚くだろうと思っているからである。実際京太郎は非常に驚いた。


 記憶だけで松常久を追い詰めるといった虎城はこのように続けて話してくれた。

「普通の事件なら、物質的な証拠が必要になるけれど、サマナーの世界にはそんなもの必要ないわ。
 
物質的な証拠なんて、捏造し放題だからね。悪魔を使えば、アリバイなんて朝飯前に作れるのだから。

 でも、そんな世界でもこれだけは信じられるという技術がある。それは悪魔の技術を使った読心術。本人さえも忘れている情報を引き出すことができるわ。

普通なら、疑われている人にかけるのだけれども、私はこれを使って私の頭の中にある情報をヤタガラスとライドウに差し出す。そうすれば、事件の顛末が伝わるでしょう」

 虎城は自信満々に言い切った。虎城は本気で読心術を使うつもりなのだ。これは珍しいやり方ではない。

 疑われているものに対して、複数の術者が読心術を使い真実を明らかにする方法を、証拠に応用するだけの話である。普通の世界で読心術など使えば、間違いなく人権侵害で問題になるだろう。

しかし、記憶しか証拠にならない場合のほうが多いのがサマナーの世界。よくある証拠の作り方なのだ。だから、彼女も読心術を利用することに決めた。



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