172: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 02:03:14.33 ID:Z22ZBlJ80
説明をしながらへこみ始めた虎城に京太郎が聞いた。
「少し疑問なんですけど、何で後方支援担当の虎城さんたちまで巻き込まれたんですか? 最前線には参加したことがないんでしたよね?
はなせないなら、別にいいですけど」
不思議な空間に引きこもっている虎城と目を合わせるために京太郎は体をひねっていた。体をひねると不思議な空間でビニール袋をいじっていた虎城と目があった。
なぜ巻き込まれたのかという質問は京太郎の純粋な疑問だった。虎城が目覚めてからずっと、抱えていた疑問だ。京太郎は思ったのだ。
「後方支援担当というのならば、そこそこ安全が約束されたところで引っ込んでいるのが普通なのではないか」と。
それこそ前線には前線での支援担当がいるだろう。京太郎の仲魔アンヘルとソックのようなもののことだ。特に、サマナーなのだから人手が足りないということはまずありえないだろうから、巻き込まれたというのは余計におかしい。
しかし虎城の班は襲われて、追いかけられている。おかしなことだ。後方支援担当班がやられるようなゆるい組織なのだろうか、ほかに職員もいただろうに。どうにも京太郎はそれがわからなかった。
そもそも、何もかもが早く回りすぎている。虎城の話の内容からすれば、京太郎の仲魔アンヘルとソックが情報を流して虎城たちは動き始めたことになっている。ちなみに、京太郎が入院して退院するまで一週間とたっていない。
ということは、一週間に満たない間に前線で動いていたヤタガラスの構成員がつぶされ、後方で動いていたはずの虎城たちまで追い込まれたということになる。
いくらなんでも松常久が気がついて行動するまでが早すぎる。
「準幹部だったから、情報が漏れた」
といえばそれまでだが、もう一つ簡単な答えが京太郎の頭には浮かんでいた。
「明らかになっていない協力者、裏切り者がヤタガラスにいる」
また、京太郎は、こんな風にも思うのだった。
「そういえば、都合よく生き残っている人間がいるな」
と。ディーはハギヨシに確認を取って納得していたけれども、京太郎は納得していなかったのだ。初めて出会ったときから、これがずっと気になっていた。
答えてくれなくともかまわなかった。京太郎はただ気になったから聞いているだけなのだ。虎城が裏切り者だろうと、まったく京太郎はどうでもよかった。裏切り者を処分するかどうかというのはヤタガラスが決めることで、京太郎が決めることではないからだ。
しかし、聞いておきたかった。疑いを抱えたままでいるのがいやだったのだ。ディーがいない今がちょうどいいタイミングだった。流石にディーがいるところで聞くのはためらわれたのだ。
話に乗って質問を飛ばしてきた京太郎に、虎城が答えた。
「本当は答えたらだめなんだけど、須賀くんは当事者だから、答えるね。
本当はだめなんだからね? ほかの人に私から聞いたっていわないでね?」
虎城はかなりおどおどとしていた。手に持っているビニール袋がグネグネと形を変えている。京太郎の目をみて何が言いたいのかを理解したのだ。そしてすぐに虎城は京太郎の誤解を解くことに決めた。
京太郎の思うところというのは虎城にしてみても当然抱くだろうところだったからだ。そのため虎城は話してもかまわない部分は話してしまうことに決めた。本当ならばヤタガラスではない京太郎に事件の内容は伝えられないこと。
しかし一応はヤタガラスのジャンパーを与えられている。そして、今は虎城がかぶっているけれどもエンブレム付きの帽子も渡されているのだ。なら完全に部外者とはいえなくはない、厳しいけれども。一応エンブレムを許されているのならいいだろうというのが彼女の判断だった。
ヤタガラスに対しての言い訳はいくらでも思いつくので、もしものときはそれで乗り切るつもりである。
質問に答えるという虎城を見て京太郎はうなずいた。実に真剣なまなざしであった。虎城が白なのか黒なのか自分で判断して京太郎は納得したかった。
うなずくのを見て、虎城は答えた。
「まずおさえておいて欲しいことがあるの。松常久のことなんだけど、松 常久はねヤタガラスのスポンサーだったの。スポンサーというのはそのままの意味で、資金を提供してくれる人。
ヤタガラスといっても、サマナーのみで出来上がっているわけじゃないの。むしろ武力なんて持っていない人のほうが多いくらいなのよ。もちろんサマナーとして生きてきた人もいるけどね。
それで少し話は変わるけど、ヤタガラスのサマナーには活動資金が渡されているの。お金がないとどうにもならないことが多いからね。
この活動資金だけど、下手な行動を取ると支給されている金額だけでは足りないってことがおきるの。
領収書を渡せばどうにかなることもあるけど、あんまりにも成果が足りていないとだんだんと受け付けてもらえなくなるのよ。
そういう、なんというか、能力的にだめな人にスポンサーがつくの。もちろんヤタガラスに斡旋される形でだけどね。龍門渕の近くのサマナーだと龍門渕のグループ企業がスポンサーにつくんじゃないかしら。
まぁそれで、ヤタガラスの構成員は手助けを受けるわけ。スポンサーにはうまみがないように見えるけど、政府から優遇してもらえたり、上手くサマナーたちを成長させていくことができれば、幹部として取り立ててもらえることもある。松常久は準幹部だったから、あと少しだったわけ。
で、ここからが本題で、困ったことにこういうスポンサーの中には子飼いのサマナーを従えて権力を手に入れたいと思う人がいたりするの。人の欲望にはきりがないって言うけど、結構な頻度で現れるのよこれが。
それで、権力に取り付かれた人間たちの一人が、松常久だった」
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