過去ログ - 京太郎「限りなく黒に近い灰色」
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2: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/03/31(火) 03:46:17.69 ID:w4MVYybr0
 六月、インターハイ長野県大会会場で、宮永咲は立ち止まっていた。きょろきょろとあたりを見渡して、どこに進めばいいのかと必死に頭を働かせている。完全に道に迷っていた。

 彼女は控え室までの道のりがさっぱりわからなくなっているのだ。トイレに行くために控え室から出て、トイレにたどり着くまではよかったのだ。

 問題なのはトイレから出てからだった。というのが、トイレから出てきた宮永咲はちょうど人の移動に巻き込まれてしまったのだ。

 何とか人波から抜け出そうとしたのだけれども、これが上手くいかずにいつの間にか流されておかしなところに取り残されてしまった。

 控え室に戻ろうとしたのだけれども、始めてくる場所だったのでいまいち感覚がつかめず困って立ち止まっていたのである。

 しかしいつまでも立ち止まっているわけにも行かなかったので、とりあえず人の気配のするほうへ進んでいった。

 宮永咲は不安の色を隠せていない。しかし歩かないことには何にもならないので、とりあえず歩いていた。

 そうして宮永咲が進んでいくと鶴賀学園の生徒たちとすれ違った。宮永咲はほっとした。まったく面識のない人たちだけれども、道を聞くくらいのことはできるからだ。

 宮永咲が声をかけようとしたのだけれども、彼女は思いとどまった。

 鶴賀学園の生徒の一人がずいぶん顔色が悪く、話しを聞けるような状況ではなかったからだ。

 知的な雰囲気の女子生徒が

「大丈夫か蒲原?」

といって顔色の悪い女子生徒の背中をさすっていた。

 顔色の悪い女子生徒は、

「心臓が止まるかと思ったぞ……」

といって震えていた。流石にこの状況で割り込んでいく勇気はない。

 鶴賀学園の生徒とすれ違った宮永咲はそのまま進んでいった。少し不安の色が減っていた。

とりあえず人の気配がする方向に進んでいけば、どうにかなるという気持ちがあるのだ。

会場は広いけれども、歩き回っていればいつかは目的地にたどり着けるだろうという考えもある。

 のんきなことを考えながら進んでいくと宮永咲は龍門渕高校の生徒たちとすれ違った。

とても背の低い女子生徒と、背の高いボーイッシュな女子生徒、メガネをかけた髪の長い女子生徒の三人である。


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