227: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/04(月) 23:56:36.09 ID:QqIqU/St0
そしていよいよ氷詰めの虎城を見つけ、ベンケイと出会い、松常久と逃走劇をはじめた話を京太郎は聞かせた。そうすると天江衣は
「花田のおじ様か! きっと面倒だとかいいながら動いてくれたのだろう。私のときもそうだったからな」
などといってはしゃいでいた。
そして松常久の策略で、オロチの世界の一番底まで落ちてしまった話をして、そこで怪しい女性とであった話をした。話をする京太郎は実に普通に話をしている。怖いものを見たのだとか、不安だったとか、そういう様子はなかった。京太郎にしてみれば、終わった話だ。なにも恐れる話ではないとわかっている。
そして脅かそうという気持ちもないのでさらっと話して進めた。
ただ、怪しい女性とであったときの話をすると、話を聞いていた四人が引いていた。アンヘルは両手で顔を隠し、ソックは引きつった笑みを浮かべている。天江衣は国広一に手を握ってもらっていた。天江衣の手を握っている国広一は遠いところを見つめていた。
京太郎の話を聞いていた四人は祝福した存在の正体に一発で気がついたのだ。すでに龍の目だとソックが判断を下しているのと、オロチの世界で出会った奇妙な女性の話でいちいち推理する必要がなかったというのが本当のところである。
京太郎を祝福したのは葦原の中つ国の塞の神。日本国が使役する超ド級霊的国防兵器である。この場で一発で気がついたものたちでも真っ暗闇の中で出会ったとしたらきっと気がつかないだろう。まさか触覚まで作って接触してくるわけがないと考えるからだ。
アンヘルとソックが引いてしまったのは、祝福を解くのがおよそ不可能であると理解したからである。もしも、祝福を解いたとしてもあっという間に同じような祝福をかけられるのが目に見えていた。
葦原の中つ国の塞の神というのは日本国の「道」の化身である。ということは日本にいる間はどこにも逃げ場がないということになる。その気になれば、この瞬間にでも触覚を現世に送り込めるのだ。祝福をとくことは不可能ではないが逃げ切るのは無理だろう。
天江衣と国広一が引いているのは明らかに恐ろしい存在を前にして普通に振舞ったというところである。京太郎の輝く目からでもわかるほど力が強い存在なのだ。
引きずるほど長い真っ黒な髪の毛に、ぼろ布をまとっただけの女の姿で現れたのならば、間違いなく恐ろしい。近づこうとも思わないだろう。しかもそんな恐ろしい相手に握手を求められたらどうするか。天江衣なら腰を抜かすだろうし、国広一なら、戦いを放棄して逃げの一手を打っていただろう。
四人が引いている間にも京太郎はドライブの内容を話していった。その間に何度も怪しい女性とであったことを話し、怪しい女性とどうにか渡り合うために頭をひねったという話をした。
特にこのとき、渡り合うために行った工夫について京太郎は力を入れて話をしていた。京太郎にとって、怪しい女性と渡り合うのはとても大切なことだった。そして心躍るものがあったから、力も入る。虎城の妄想推理と同じ理屈である。
そしていよいよ、ディーが離れている間に怪しい女性が現れたことを語り始めた。スポーツカーのフロントガラスに怪しい女性がヒビを入れた話をした。そのときずいぶん、天江衣と国広一は驚いた。
特に天江衣はこのようにつぶやいて、青ざめていた。
「ハギヨシの結界を壊せるとは流石オロチといったところか。黒い神父の攻撃でも壊れなかったのだがな。
ん? ということは真白は大変なことになったな。修理代で貯金が吹っ飛ぶな、間違いなく。
まぁ、これをきっかけに考え直してほしいところだな。自分の仮面を車に組み込むような阿呆なことをするから、いざというときに困るのだ」
青ざめている天江衣を見ながら、輝く赤い目を渡されるまでの話を京太郎は語った。そのときに詳しく話したのは、音速のステージに無理やり上った場面だった。しかしそれは、京太郎が自慢をしたかったわけではない。
それ以降の動きを京太郎が知らないので、知っているところだけを詳しくしたのだ。なぜなら不相応なステージに無理やり上った代償で、京太郎の脳みそは動いていなかった。生きてはいたけれども激痛でパンクしていた。思い出せるのは虎城に助けてもらえるまで激痛にもだえていたということだけである。
そうなると、話せるところに力を注ぐしかない。京太郎が話せるところとは音速のステージに乗るために自分の内側にありえないほどの負荷をかけた話と、かろうじて一本とって一泡吹かせたというところだけだ。
そして話せるところを話し終わると、痛みから回復してあっという間に輝く赤い目を押し付けられた、と京太郎は話を締めた。
話し終わった京太郎は居心地が悪そうにしている。
それもそのはず、自分の仲魔二人がずいぶん冷えた目で京太郎を見つめていたからである。そして天江衣も国広一もなんともいえない表情を浮かべて京太郎を見ているのだ。
彼女らの目をみると何が言いたいのかよくわかった。一回自分の行動を客観的に見たこともあって、余計に彼女たちの言いたいことがわかった。
ずいぶん間をおいてから、天江衣がこういった。
「もしかして京太郎は馬鹿なのか?」
かなり配慮された表現だった。
京太郎が答えた。
「そう、なんだとおもいます」
京太郎があいまいな笑みを浮かた。話が終わった後、アンヘルとソックが説教をはじめるために動き出した。
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