過去ログ - 京太郎「限りなく黒に近い灰色」
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228: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/04(月) 23:59:53.45 ID:QqIqU/St0
 京太郎たちが汚れを落としに向かった後の話だ。中庭でハギヨシたちが会話をしていた。きしんでいるスポーツカーの近くにたっているハギヨシがこういった。

「ヤタガラス東京支部虎城班班長、虎城ゆたかさん。十四代目葛葉ライドウの指令を受け、松常久の内偵にあなたたちが参加していたのは確認しています。

 そして、内偵を担当していた構成員ひとりと、あなたの部下四名が行方不明になっているのも、同じく確認しています。

 何が起きたのか、今回の内偵の結果も含めて、全てを明らかにするため、協力してもらえますね?」

 ハギヨシはできるだけ丁寧に虎城に話しかけていた。ディーから連絡を受けたハギヨシはすぐに動き出せるように準備を整えていたのだ。後はディーが無事に虎城をつれて戻れば松常久の処刑が決定するところまで整えていた。

虎城に同意を求めているのは、一応の手続きのためである。無理やり読心術をかけることもいざとなればできるけれど、虎城がうなずいて話をしてくれるのが一番当たり障りがないのだ。

 ハギヨシのこの問いかけに、虎城はうなずいた。虎城はすでにスポーツカーの不思議な空間から出てきている。スポーツカーにもたれかかるようにしてなんとか立っていた。そして久しぶりに現世の空気を吸ってほっとしている。

 顔色は悪かったが、これで望みが果たせるという喜びがみえる。読心術を受ける覚悟はとっくの昔にできているのだ。当然協力するつもりである。

 ハギヨシが言い出さなければ、自分から切り出していた。自分の情報をヤタガラスに提供することで松常久を追い込めるのならば、それだけで十分だった。そして、そうすることが自分の部下たちに報いることと信じていた。

 虎城がうなずくと、ハギヨシは微笑んだ。

「ご苦労様でした。これで、松常久を追い込めます。幸いといっていいのか協力してくれる友好的な幹部もパーティーに参加してくれていますから、手を借りましょう」

 ハギヨシが伝えると、虎城は何度もうなずいた。本当ならば、声を出して喜びたいところだ。しかし、無茶な逃走劇があったために彼女の体力はなくなっているのだ。報われた。そう思うだけで意識が切れてしまいそうだった。


 このときに、虎城にディーが教えた。

「虎城さん、あなたに伝えておきたいことがある。もしかするとあなたの班員たちは生きているかもしれない」

 虎城に話しかける前にハギヨシに目で合図を送っていた。教えてもいいだろうかという合図である。そうするとハギヨシは軽くうなずいた。教えてもかまわないという合図である。

 ディーはオロチの腹の中で起きたことをハギヨシに伝えている。おきたこととはオロチの腹の中で松常久の腹に奇妙な人形が埋め込まれていると京太郎に指摘されたこと。

 そして人形が生きた人間であるという事実に行き当たったことだ。ハギヨシとディーはこの埋め込まれていた人形たちこそ、行方不明になった班員たちではないのかと考えていた。

 根拠もある。

 ヤタガラスの構成員のイタコ能力に班員たちが引っかからなかったのだ。

 ヤタガラスの構成員には特殊な能力を持ったものが多い。虎城の回復魔法、ディーの風の能力、京太郎のような高い戦闘能力。話に出ている読心術。

 異能力というのが実にさまざまなのだ。京太郎は戦いに特化しているけれども、まったく戦いに関係のない能力を持っているものもいる。

 魔法の道具を作るものだとか、治療に特化しているとか、瞬間移動ができるとか。悪魔を見る、悪魔の言葉を理解するというのもひとつの能力で、今のように技術が発達していなかった時代は悪魔に出会うのにも話しかけるのにも修行が必要だった。

また尋常ではないマグネタイトの保有能力というのも異能力である。天江衣のことだ。

 そして異能力の中にはイタコのような能力もある。死者の言葉を届ける力である。いかにもうそ臭い能力だが、当たり前のように本物がヤタガラスに在籍している。

 この能力を持ったものたちは、死んでしまった者たちの声を届けてくれる。それこそ熟練のイタコならば輪廻でもしていない限りは霊魂を呼び出せるのだ。

 松常久の裏切りという話を聞いたハギヨシはすぐにイタコの手配をした。なぜなら、死んでしまっているのならばここから情報が手に入るからである。

 しかしヤタガラスのイタコは行方不明になった構成員の魂を口寄せできていない。さっぱり呼び出せないのだ。内偵を行っていた構成員も虎城の部下たちもまったく応答がなかった。

 となれば、可能性は二つ。ひとつは魂が輪廻している可能性。すでに次の命として、生まれ変わっている。別の命として生まれ変わっているのならば、呼び出すことはできない。

 もうひとつの可能性はまだ死んでいないという可能性。死んでいなければ口寄せすることはできないのだから、生きているのだろうという発想である。流石に昨日の今日で輪廻するということはまずありえないので、ヤタガラスは生存していると考えていた。

 ディーがこの事実を伝えたいと思ったのは、少しくらい虎城の心の重たさを軽くしてやりたいと考えたからである。ただ、もしかしたら間違えているかもしれないのでハギヨシの許可を求めたのだった。そうするとハギヨシは問題ないとうなずいたので、ディーは教えたのだった。




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