過去ログ - 京太郎「限りなく黒に近い灰色」
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58: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/07(火) 05:25:32.41 ID:Joyq1BtQ0

 異界物流センターの内部に入り駐車場に車をデーが止めた。シートベルトをはずしたディーは京太郎にこういった。

「それじゃあ、俺は荷物を引き取ってくるから、須賀ちゃんは買い物しててよ。大体十五分くらいで済むと思うから、急がなくていいよ。

 あと、この異界物流センターはマグネタイトで買い物ができるから、お金が足りなかったらマグネタイトで払ったらいい」

 京太郎に軽く説明したのは、京太郎が物流センターの仕組みを知らないのを知っていたからである。もしも京太郎が何か珍しいアイテムでもほしくなったときに支払いの仕方を知らなければ困ることになるだろうと、気を使ったのだ。

 京太郎がうなずくと異界物流センターの中に書類を持ってディーが入っていった。

 ディーがさっさといったのを見送った後。ウエストポーチの中に財布が入っているのを確認してから、異界物流センターの中に京太郎は入っていった。


 異界物流センターの中に入った京太郎は出入り口の掲示板の前に立っていた。物流センターの出入り口の近くにはエレベーターがあるのだ。

その近くに掲示板があった。その前に京太郎は立っているのだ。

 京太郎はこの建物の構造をさっぱり知らない。ほしいものは初回限定版の漫画であるから本屋に向かう必要がある。しかし場所がわからない。

さてどうしようかとなって歩き回るというのもいいのだが、京太郎はしなかった。

 なぜならセンターの中は地図がなければ確実に迷うだろう造りになっていたからだ。広い上に店の数が半端ではない。

人もかなり多く、下手にうろつくと大変な目にあうのが目に見えていた。京太郎は早々に歩き回るのをやめて、エレベーターの近くにあった案内板をみて自分の行方を定めようとした。

 そして買い物をするために本屋の場所を掲示板の中から京太郎は探しはじめた。今までにないくらい真剣な表情を京太郎は浮かべていた。

目を細めて、見逃さないように集中していた。理由は簡単である。

 案内板が案内板として出来上がっていなかったのだ。混雑に混雑を極めているらしく、どこに何があるのかがさっぱりわからない。

米粒のような文字でいろいろな店名が書かれているのだけれども、読み取れない。

神経がとがって困っている京太郎でなければおそらく本屋の文字を見つけることはできなかっただろう。

 かなり雑な案内板だったが、京太郎は本屋を見つけられた。発散できないエネルギーが集中力を増しているというのを覚えていたので、意識してエネルギーを溜め込んでみたのだ。そうすると、見事に集中力が高まり本屋の位置を探し当てられた。

ただ、やはりというべきか発散するべきものを溜め込んだ結果代償があった。

 頭が微妙に痛んでいた。

 本屋の位置を見つけた京太郎は痛みを感じながら混沌としたセンター内部を進んでいった。

実に進みにくかった。買い物客だと判断した客引きの悪魔を払いのけてみたり、自分の財布を狙ってくる小ざかしいチンピラどもを蹴り飛ばして進んだ。

また建物の中に崖があったり、壁を作っている悪魔がいたりしたので迂回する必要があった。

しかしそういう一切を乗り越えて、京太郎は物流センター内部の本屋にたどり着いた。そうしなければ自分のお目当ての商品を手に入れられないのだから、そうするしかあるまい。

 
 混沌とした異界物流センターを進んだ京太郎は本屋の前に立っていた。少し疲れていた。しかしやっとここまで来たのだ。迷路のような建物。しつこく絡んでくる悪魔たち。よほどの用事がない限りはこの本屋を利用しないと京太郎は心に誓った。

 また、本屋に来る前にきっちりとどこに何があるのかを確認しておいてよかったと、京太郎は自分をほめた。きっと、先に地図を確認していなければ迷い倒してイラついて壁を力づくで壊すようなことをしていただろう。

 本屋の中に入った京太郎は本日発売のマンガを発見した。ずいぶんと見つけるのがすばやかった。本屋の店員が作ったポップが目に入ったからである。

京太郎はこのとき

「店の場所にもこういうポップをつけてくれたらいいのに」

と思った。

 京太郎が漫画を手に取ったとき、ぴたりと動きが止まった。京太郎の手にある初回限定版の漫画には付録がついていた。オリジナルアニメ収録のブルーレイだ。普通のマンガではない。特別な仕様だ。京太郎は値段をしっかりと確認していなかったのだ。

 すぐに京太郎は漫画の値段を確認した。

 値段を見た京太郎がいやな顔をした。限定版というのは大体お高いものだ。漫画でも同じことがよくある。

 京太郎はすぐに財布の中身を確認した、そしてため息を吐いた。完全に足りていなかった。自分の仲魔に買い物をお願いしたときに、お金を渡したのを忘れていた。

 しかしすぐに持ち直した。そしてこういった。

「マグネタイトで払うか……そうしよう」

 京太郎の顔色はよかった。お金がないならマグネタイトで払えばいいじゃないか。自分をここまで連れてきてくれたディーの助言がここで生きていた。

 初回限定版を手にとった京太郎はカウンターに持っていった。足取りは実に軽かった。やっとこれで、ほしかったものが手に入るのだから、うれしくもなる。少しは退屈もまぎれるだろう。



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