10: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/03/31(火) 06:24:46.96 ID:zAK3ZPJb0
「卒業生の皆さん!ご卒業おめでとうございます!放課後ティータイムです!」
真ん中の−−ボーカルの、唯が叫んで−−。
「1!2!」
ドラムのりっちゃんがカウントして−−。
唯のギターと、澪のベース、りっちゃんのドラムに、
むぎ様のピアノ、そして、梓のギターが一斉に鳴り響くんだ。
知らないわけない、だって、今まで、何回も、何回も遠くから近くから見てたんだ。
高校1年の時の初めての日本武道館で、高校2年の夏休みに、
親に初めて嘘をついて泊まりで行った大阪のフェスティバルホールで、
高校3年の春、今度は両親にちゃんと許しを得て行った、
雪の降る札幌のペニーレーンで、そして、先週の東京ドームで。
そんな、彼女たちが−−放課後ティータイムが、今まさにわたしたちの目の前で演奏を始めようとしている。
そして、りっちゃんの2カウントの後、それまでの卒業式っぽい厳粛な空気を
ぶっ壊すような大音量で彼女たちは演奏を始めると、わたしたちは
それに負けないくらい大きな歓声をあげて、一斉に舞台の側へと殺到した。
わたしも、今までにないくらい急いで、叫んで、彼女たちの下へたどり着く。
元々出席番号順のもと、最前に座っていたおかげか、
わたしは舞台の縁にめり込むくらいの位置から彼女たちを見上げた。
近すぎて見えない。
いや、逆だ。見えすぎて、自分の中で処理できない。例えじゃなく本当に手を伸ばせば届いてしまう。
真っ直ぐ視線を伸ばせば、音の波の上を歩くようにリズムをとり、その中を泳ぎながら
上手に息継ぎをするように、ハイハットを開いたり閉じたりしてペダルを踏むりっちゃんの左足、
心臓の鼓動をそのまま鳴らすような8ビートの表拍−−バスドラを力強く踏み抜くりっちゃんの右足。
そして、騒がしいようで優しいそのテンポやリズムを、耕すように足踏みする4人の足が見える。
見上げれば、それぞれの髪の毛の一本一本が光に反射するのが、
瞬きが、唇が動いた時の頬のえくぼが。全部、丸ごと私の目に入る。
それも、テレビの画面や、パソコンの画面を通してではなく、この目に直接。
わたしはとても受け止めきれなくて。
ただただ、身体中の全てが彼女たちを受け止めようと必死に音の中で揺れていた。
20Res/23.77 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。