6: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/03/31(火) 06:12:58.38 ID:zAK3ZPJb0
そして晴れて桜が丘に入学して高校生になると、実際にライブへも足を運ぶようになった。
軽音部に入部する。という選択肢もあったのだが、体験入部の際に部室に入った瞬間、
そこに拡がる空気で胸がいっぱいになり、同時にわたしには“音楽を演奏する”という才能には
全く恵まれなかったことを思い知らされて断念していた。
同じ好みを持つ仲間も自然と増えた。わたしのようにHTTを追って桜が丘に入学する子もいたし、
ネットやSNSでは、年齢も性別も生まれた場所も違うけれど、延々と同じ趣味について同じ角度から、
あるいは違う角度から話していられる人たちがいることを知った。
そうして初めてのライブとなったのが、ネットで知り合った
ファン仲間に定価で譲ってもらった、彼女たちの初めての武道館公演だった。
その後も全国のライブハウスツアーにホールツアー、夏フェス出演、アリーナツアーと、
同じく高校生になって始めたバイトのお給料は、そうしたライブに新譜にグッズにと、全て彼女たちを追うために使った。
わたしの周囲が、そして私自身が少しずつ変わっていくのと同時に、
彼女たちも月日を追う毎にたくさんの人に囲まれ、愛されるようになっていった。
彼女たちは、わたしが今までに行ったこともない街や場所に行くきっかけをくれた。
新幹線や、ホテルの取り方、飛行機のチェックイン、全部一人でできるようになった。
彼女たちは、わたしにたくさんの優しくて楽しい、同じ音楽を愛する人たちと出会わせてくれた。
話す言葉も、文化も、環境も、少し違う人たちと、出会わせてくれた。
他の地方に住むみんなは、わたしが「桜高生です」と言うと、決まってキラキラした目で
「すごい!」「軽音部?」「制服の写真ある?」「部室はどんななの?」なんて聞いてくるので、
「いえ、軽音部ではないんです。体験入部はしたんですけど、部室に入って、それだけで満足しちゃって……
それに制服も、HTTがいた頃と今は少し違うんです」と、いちいち答えるのは少し、照れくさかったのだけれど。
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