5: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/03/31(火) 06:10:13.60 ID:zAK3ZPJb0
それからのわたしは彼女たちを知ることに夢中になった。
5人の女の子がやっているバンドであること、みんなすごく仲良しなこと、高校の同級生で、お茶とケーキが大好きなこと。
その中の唯一の年下メンバーが大学を卒業した時−−わたしが中学2年の時に、メジャーデビューしたこと。
そして、メンバー全員がわたしの家から2、3駅のところにある、桜ヶ丘女子の出身であること。
私はすぐに志望校を変えた。親には少しばかり小言も言われたが、
中学での成績や態度も優等生だったので、反対はされなかった。
「彼女たちのようになりたい」ではなく、彼女たちが生きていた場所で、彼女たちの音を聴きたかった。
それはただの優等生だった私の、私なりの反抗だったのかもしれない。
親へ、或いは平凡な自分へ向けたものなのか、考えているうちに季節は巡り、気づけば春の訪れがすぐそこまで来ていた。
そうして難なく、そつなく受験を終えた頃には、わたしの部屋は放課後ティータイムだらけになっていた。
デビューからのシングル、アルバムは勿論、ライブDVDや彼女たちの
インタビュー記事が載った雑誌等、その全てを今まで貯めていたお小遣いをはたいて揃えた。
本を読むように歌詞を読み、映画を観るようにステージの上の彼女たちを液晶越しに見つめ、
内緒話に耳をすませるように音を聴いた。晩御飯の時には音楽番組に出演している彼女たちの姿を観て、
「今日は緊張しているな」とか、「今日は調子がいいな」とかの感想を抱き、夜眠る前には彼女たちのラジオを聴いて、
ステージ上では見せない素の言葉に耳を傾けた。
果てはネットの共有サイトに上がっていた、彼女たちが高校時代に作ったテープ音源まで網羅するようになっていた。
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