15: ◆DFyQ72NN8s[saga]
2015/04/04(土) 06:02:03.07 ID:JO/9j/TF0
「それから」
私は、お姉ちゃんを愛していました。
かけがえの無い家族として、たった一人の姉として−−そして、一人の女性として。
この気持ちに気付いたのは私が中学2年の時、同じクラスの男の子に告白されたのがきっかけでした。
周りの女の子も、恋をして、初めての彼氏ができて、
自分もそうなっていくのかな−−そう思っていた頃の事です。
私に「付き合ってほしい」と告白した男の子がいました。
それは爽やかで顔もかっこいい、サッカー部の男の子でした。
私はその言葉を受けた時−−驚きました。
何とも思わなかったのです。
告白されるってことは、もう少しときめいたり、やだなと
思ったり、何かしら心が動くものだと−−そう思っていたのに。
私の心はぴくりとも動きはしませんでした。
それどころか夕暮れの教室でひとり、「早く家に帰りたいなぁ」とだけ、思っていたのです。
もちろん、そんな想いを口にしたら悪戯に傷つけてしまうだけなので、
その場で丁寧に「ごめんなさい」と断って−−私は家へと急いで帰りました。
恋を知らない私だから、なんとも思わなかったのかな……?
誰かを好きになったことがないから、なんとも思わなかったのかな……?
そんなことを考えながら、私は家路を急ぎました。
一刻も早く忘れてしまいたいとか、そんな気持ちも、あったのかもしれません。
だけど何故でしょうか−−そんな事より何より、お姉ちゃんに逢いたくて、仕方がなかったのです。
家に帰った私を、お姉ちゃんはいつも通り出迎えてくれました。
「ういー、おかえり。今日は遅かったね、なんかあったの?」
「ううん、なんでもないよ」と、その言葉を口に出そうとお姉ちゃんの方へ顔を上げた、その時です−−
私の前にいる、いつも通りの柔らかい笑顔で私を見るお姉ちゃんに、突然どくん、と胸が跳ねたのは。
少し癖のある、栗色の髪。丸くて大きな瞳に柔らかく弾むようなその唇。
砂糖菓子みたいな甘い声と、小さくて頼りないけれど、温かい手のひら。
そこに居るのは私によく似ているのに、私とは全く違う−−。
たった一人の、私の“お姉ちゃん”。
私は、その瞬間。
その人に−−平沢唯に。
ずっと恋をしていたのだと、気付いてしまったのです。
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