過去ログ - モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part12
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827: ◆lhyaSqoHV6[sagasage]
2016/02/25(木) 08:31:04.13 ID:rhio0V+5o

──そんなこんなで現在──


葵「──で、結局、仁美さんは吸血鬼をやっつけに行くん?」

共に情報番組を見ていた葵は、仁美に今後の行動について尋ねる。

仁美「うーん……行かない、かなぁ」

仁美「というのも、アイドルヒーロー同盟が会見開いてまで相手をするって言ってるし」

仁美「アタシの出る幕じゃ無いよね」

仁美は、世間的には在野ヒーローとさえ認識されていない程無名の存在である。
故に「吸血鬼の退治屋だ」などと抜かし同盟のテリトリーに踏み込めば、白眼視のうえ門前払いされるであろうことは想像に難くない。


仁美「例によって、同盟の手が届かないところを見回るかな」

葵「例によって?」

仁美「こっちの話」

つまり、差し当たって京華学院の吸血鬼退治に向かう予定は無いということだった。


仁美「逆にさ、葵っちがさ、その吸血鬼に会いに行ってみたら? 知っている相手かもよ?」

今度は仁美が、冗談めいて問いかける。

葵「うーん……」

それに対し葵は、仁美の言を真に受けつつも乗り気でないような、苦笑いのような表情を見せた。


葵「仮に知っちょる相手だったとしても、今のあたしの姿を見たら多分ガッカリさせちゃうからね」

仁美「昔の葵っちはやっぱり武闘派な感じで、それを慕って付いてきてた吸血鬼が多かった──みたいな?」

葵「今となっては、お恥ずかしい話やに……」

葵は、仁美に昔の話をする度に、気恥ずかしさと共にどこか廓寥とした想いを知覚していた。
人間で例えるなら、若い頃の愚行を恥じつつも、その当時を懐かしむかのような、そういった類の感情である。

そもそも、葵は自らが封じられてから──途方もない時間であろうことは確かだが、
どれほどの月日が経ったのか正確に把握していなかった。
当然、その間に吸血鬼の社会も世代交代なり、諸々の時代の流れといったものはあっただろう。
あるいは、その流れの中で自分の存在はとうの昔に忘却の彼方へと葬り去られているのではないかと、そう考えることも多い。
葵自身は人に仇を成す存在でなくなって久しいが、かつて率いていた吸血鬼らの現況について、興味が無いかと言われればそのような事は無かった。


仁美「……まあでも、機会があったら、料理でも振舞ってあげたらいいんじゃない?」

仁美「何かの拍子に、昔馴染みの吸血鬼に会えたらさ」

なんとなく感傷的な雰囲気を感じ取った仁美は、半ば無理矢理フォローじみた言葉を絞り出す。


葵「そうねぇ……」

葵「機会が、あったらね……」

そう呟いた葵の瞳は、テレビ画面に映る京華学院上空の中継映像──
その奥にある、今回の騒動の首魁が座す、不可視の戦艦を見据えているかのようだった。



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