過去ログ - 【ダンガンロンパ】霧切「探偵だけではない青春」
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454: ◆AZbDPlV/MM[saga]
2015/04/21(火) 12:47:14.00 ID:Y0T4oA2O0
仁 「君に将来、愛おしい、人生を共にしたいと想う人ができた時、私の気持ちを理解してもらえると思う」

 そして、記憶の中の母は病床に臥してはいたけれど、微笑みを絶やさないような人…これだけ。過ごした時間はあまりにも短く、私の悲しみと、彼の悲しみに大きな差があるということも気づいてしまった。

仁 「その上で、君は最終的に教えを守ることを選んだとしても、それは君の決断だ。それでいい。君は霧切の人間だから」

 まって…これじゃあまるで、彼の方がよほど人命を尊重しているみたいじゃない……? 私の意思を尊重しているよう……。

仁 「私は君を娘として、探偵として成長している姿はとても誇らしく思う」

仁 「君の探偵の才能を育て上げたあの人に、それだけは感謝するよ」

 探偵としては正解…人としては…? 私は普段なら腹を立てるだろう彼の言葉も受け入れていた。父親面しないでと、言えない。

霧切 「どうして私を捨てたの?」

 そして、私は一番訊きたい理由を、ついに訊く。私が周囲に“親に捨てられたかわいそうな娘”として見られ、彼の存在に縛られていた人生。私がそうならなければならなかった理由を。

仁 「捨てたのではないんだけどね」

仁 「霧切の家の教えが嫌いでね…探偵の道しか用意されていないなんてあんまりだ。君をもっと普通の女の子のように、自由に夢を持たせてやりたかった」

 探偵以外の道……? そんなの、考えられない。

仁 「でも、君の探偵の才能がそれを許さなかった」

ああ――そうか――

仁 「母さんの件で、君は探偵としての道を選んだ。だから、君を霧切の家に残したんだ。私が祖父と対立する意味がなくなったからね」

――私がそうさせていたのね――

仁 「しかしはっきりと言えるのは、君をいつだって想っているよ。忘れた日はない」

霧切 「だったらどうして黙っていってしまうの」

 解っているのに、口からそんな言葉を吐いていた。たんなるわがままを。

仁 「私が一緒に行こうといって、君は着いて来た?」

霧切 「……っ」

仁 「君は優しいから、祖父をひとりにはしないだろう?」

仁 「君にその才能がある限り、探偵としての生き方を捨てられないだろうことも」

霧切 「それは……それでも……」

 ひと言、欲しかった。そのひと言で、秤にかけてしまうことに苦悩したとしても、ひと言でも……でも私は、どうしただろうか? 答えられただろうか?
 ただの身勝手で幼稚で自分本位な今の自分に嫌悪する。彼を憎んでいる自分が滑稽で、恥ずかしい。

仁 「……そうだね。申し訳なかった」

 何も答えられなかった。言葉を発すれば、目元に溜まるモノをみっともなく溢れさせてしまいそうだったから。

仁 「……そろそろ時間が押してきているから、私は失礼するよ」

霧切 「……」

 たくさんあった言いたいことは全て霧散してしまう。けれど、複雑な心境は、頭をを爪で血が滲むほど引っ掻き回したくなるほどに悪化する。

 この先、私は彼とどう接していけばいい? 今まで抱えたモノが全て消えてしまった。素直に終わらせられない自分の諦めの悪さに吐き気がする。胸が痛い。涙をひとつ落とすと、とまらずに次々に溢れた。


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