過去ログ - 扶桑「私たちに、沈めとおっしゃるのですか?」 提督「そうだ」
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34: ◆bBUdJHUgklsz[saga]
2015/05/07(木) 19:10:57.06 ID:IMm/5xos0
 不幸型と揶揄されても。
欠陥戦艦だと馬鹿にされても。
それでも戦艦としての誇りだけは捨てなかった。

 盛大な砲撃音に、身も心も揺さぶるような振動。鼻を突く火薬の匂い。
 生と死の狭間で、唯一自分の存在意義を確認できた。
 兵器でもなく、純粋な人間でもない。そんな自分の存在意義を。

 だが、この作戦での自分の役割は勝つことじゃない。
 生き残ること能わぬ場で、1刻でも長い時間を稼ぐこと。
 もしかすると、数分も持たないかもしれない。
主力艦隊が駆け付けるまでの間耐え抜いたとしても、その間身を貫くような痛みや苦しみを味わうだろう。
 どちらに転んでも、それは地獄でしかない。

「……違う」

 力なく零したその声音は、いつもの勝気な山城からは想像もできないものだった。

「私が望んだ海戦は、こんなものじゃ……」

 血が湧き立ち、心躍る戦を。
 いつの日か、と待ち望んでいた。
 こんなの、望んでなどいない。提督は分かってくれているはず。
 これほどまで強く訴えているのに……。

――どうして何も言ってくれないのっ

 言葉もかけてくれない。表情も崩さない。 
 自分たちがこの戦でどうなるかくらい、分かっているはずだ。
 心配を見せるでもない。この作戦は正しいものなのだ、そう言葉に出さず投げかけてくる。

信頼する男から、死ねと言われて、願いも打ち砕かれて。
 どうして、気を保っていられようか。

「山城っ!?」

 逃げたい、この場から今すぐに。
 そんな考えが頭によぎった、瞬間、体が動き出していた。
 扶桑の制止も振り切り、提督室から飛び出した。




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