38:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 18:35:43.28 ID:+HxJNIVIo
唯「誰だったの?」
憂「宅急便屋さん。隣のおばあちゃん家と間違ってたみたいだから少しだけ教えといた」
唯「なーんだ」
……なんだ、やっぱり唯は帰ってたのか。ちゃんと帰れたことにはとりあえず安心だな。
………いや、でも、これはちょっとよろしくないんじゃないか?
だって、唯が今日帰省したのは誰かと会うためで、その相手のことは内緒にしたかったわけで。
憂ちゃんいわくここには「お客さんが来てる」らしくて、そのはずの場に唯もいて。
……ということはもしかしたら唯が隠したがった相手がここにいるのでは?
さっきの、どこかで見たような気がする靴の相手が、すぐ向こうに……
梓「……で、唯先輩、どうでしたか? 私達のライブは」
……梓!?
この声、間違えようがない。そこにいるのは……憂ちゃんの言う「お客さん」は、間違いなく梓だ…!
唯「うん、すごかったね。あずにゃんの軽音部、いい子達ばかりでとても楽しそう」
……梓の率いる『わかばガールズ』の学園祭での公演を、私達は直接見に行くことは出来なかった。不幸にも私達の学園祭と日程が被ってしまったからだ。
梓には前もって謝っておいたが、もちろんそれだけで済ませることなんて出来ない。
『何故か』ムギが持っていた梓達のライブ映像をその日の夜のうちに皆で観て、感想を一気に梓に送りつけた。その日のメールは深夜まで続いたことを覚えている。
私達の誰もが、梓達のその姿に刺激を受けたのは間違いなかった。ゆえに今の唯の言葉はその時の皆の総意でもあった。
……でも、何故? 何故梓が今ここにいて、その話を唯にしているんだ?
梓「ありがとうございます。……ってそれはもうたくさん聞きました!」
憂「でも嬉しいんでしょ? 部長」
梓「嬉しいけどっ! 今言いたいのはそういうことじゃなくて!」
唯「………」
梓「……どうでしたか、唯先輩。私が、いえ、私達がこの星でする最後のライブとして、相応しいと思ってくれましたか?」
……えっ?
唯「……本当に、あの星に帰るの? 私は地球生まれだからわからないけど、ひどい星だってお父さん達は言ってたよ?」
梓「私だって地球生まれですし、親から同じように聞いてます。でも、だからこそ一目見てみたいと思いますし、同時にあの星のために何か出来るならやってみたいとも思うんです」
唯「……いいじゃん、このまま地球で暮らそうよ。楽しいでしょ?」
梓「それはもちろんです。いえ、むしろ楽しすぎるから今しかないって思ったんです。このまま先輩達と同じ大学に行ったら、きっともう機会はありません」
唯「……そう、かな。私にはよくわかんないや」
梓「……もう大学も辞退してきました。もう戻れない……ってことはないですけど、でもそのくらいには決意は固いつもりです」
唯「……憂も?」
憂「……わからない。梓ちゃんの、一度母星を見てみたいって気持ちは、わかる。でもお父さんお母さんが捨てたような星を、私達だけで何とかするのは……難しいと思う」
梓「……私も、命をかけてまでやろうって心意気じゃないよ。無理ならすぐに戻ってくるつもり」
「でも、もしも私達が地球で学んだこの『楽しさ』を、ほんの僅かに分けるだけでも苦しむ人が減る、としたら……って思うと、止まらなくて」
唯「ひどい星だからこそ、ってこと?」
梓「はい。だからこそ私みたいな小さな存在でも、小さな小さな波紋にくらいにならなれるんじゃないかって。たとえ全部をひっくり返すのは無理だとしても」
唯「……それが終わったら、帰ってくるの?」
梓「はい。いつになるかはわかりませんが……」
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