過去ログ - 澪「グレイッシュ・ガール」
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41:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 18:39:38.72 ID:+HxJNIVIo

唯「っ………」


唯も何も言えずにいた。
唯の口にした「憂次第」という言葉は、憂ちゃんに決断を強いるだけの言葉。
ずっと悩み続けてきてもなお答えの出せない憂ちゃんにとって、そんな言葉は何の意味も無い。
それが憂ちゃんの意見を尊重したいという意味で言ったのだとしても、そもそもその意見が持てないのだから。

自分の意見を持っていた梓。
他人の意見を尊重したかった唯。
その中間にあり、どちらにも動けないのが憂ちゃんだった。
いや、唯だって『他人の意見を尊重したい』という自分の意見を持っている。それに反し憂ちゃんは、なまじどちらの言い分もしっかり理解しているがために……
……決めかねている、なんて言葉で表しちゃいけなかった。憂ちゃんは、悩み苦しみ、焦燥していた。

……力になりたい。そう思った。


澪「……梓、唯」


そう思ったのは、きっとこの二人も一緒だと思うけど。


澪「憂ちゃんに相談されたのは私だ。だから、ちょっとだけ憂ちゃんのこと、任せてくれないか?」


……二人とも、申し訳なさそうな、縋るような、そんな複雑な表情とともに頷いてくれた。





――別に、何か策があったわけじゃない。
ただ、まだ自分の意見を言っていない私だからこそ出来ることがあるんじゃないかと思っただけ。
……というかそもそも私もまだ自分の意見が持てていないんだけど。
というわけで、とりあえず情報の整理がしたかった。故に憂ちゃんの部屋で憂ちゃんと二人で、ひとまず現状を把握しよう、ということに。

梓の意見のほうは簡単だ。優しく前向きな梓が、ひどい状態にあるらしい祖星(とでも言うのだろうか)をなんとかしたい。なんとか出来なくとも一目見てみたい。それだけだ。
それに対し、それら全ては地球人としての普通の生活を捨ててやるほどの価値は無い、と否定したそうなのが唯だ。キツい言い方をするなら。
もっとも梓や憂ちゃんをあんなにも溺愛している唯だから、そんなの建前で単に二人と離れたくないというだけの可能性もある。が、それは今は考えないでおく。前述の理由にどれほどの説得力があるかが今は問題だ。
そしてその理由の元は、祖星を捨ててきたご両親から聞かされた当時の様子によるものが大きいと思われる。梓も似たような感じで両親から聞かされているらしいが……


澪「……私も、憂ちゃんのご両親から当時の話を聞いてみたい。判断の材料にしたい」

憂「……わかりました。メールしてみますね」

澪「うん、ありがとう」

憂「……あの、澪さん。私を責めないんですか…?」

澪「え? なんで??」

憂「……私は、澪さんを利用したと思われても仕方ないと、今なら思えます。梓ちゃんやお姉ちゃんに隠し事をしたのも悪いことだと思ってます」

澪「……うーん、多少の隠し事くらい、してもいいと思うよ。今日の唯だって、梓と会うってことを私に隠してたわけだし。もちろん梓も私に黙って私の彼女と会おうとしてたわけだし」

憂「でも、それは――」

澪「うん、そこにはちゃんと互いを思い遣っての理由がある。憂ちゃんだってさっき言ってたじゃないか、梓の足を引っ張りたくないって。だから自分なりの結論を出そうと急いで、私を呼んだ」

憂「……たとえそれで隠し事のほうは許されても、自分の都合で澪さんを利用したことは許されません」

澪「利用? おかしいな、私は悩みを相談されてるだけなんだけど?」

憂「で、でも……」

澪「こんなもの言い方次第だよ。そして私の感じ方次第。さらにもっと言うなら、今の憂ちゃんになら利用されたって構わないって思う」

憂「………」

澪「……なんて、さっきドジして台無しにした本人が言っていいセリフじゃないか。ごめんね、うまく出来なくて」

憂「い、いえ! あの、今となってはちょっと、バレてよかったなって思える面もあるんです……私から頼んでおいて、勝手な言い分ですけど」

澪「そうなの?」

憂「はい。少なくとも、梓ちゃんに謝る機会がもらえたので、それだけでも良かったです。私の決断も待っててくれた梓ちゃんに……」

澪「………」




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