777: ◆v5iNaFrKLk[saga]
2015/09/08(火) 23:46:53.55 ID:xF+q4QER0
「シーサイドFMよりお送りします、ナイト・オン・ザ・チェック。お相手は私、霧島奈央です」
大井パーキング。
提督と別れた後、どうにも落ち着かなくて、つい来てしまった。
ラジオから流れる聡明な女性の声が耳をくすぐり、幾数多のヘッドライトは光の運河となり目の前を通り過ぎて行く。
そんな景色をぼんやりと眺めつつ、甘ったるい缶コーヒーを口に運ぶ。
眠気覚ましのつもりで買ったのに、かえって眠くなってしまいそうだ。
それにしても、シートを倒せないのは辛いなぁ。
せっかくサンルーフ(夕張曰くTバールーフと云うらしい)が付いているんだから、寝転がって星を見れれば最高だったんだけど。
峠に登れば、それはもう綺麗に見えるはずだ。
「……夕張は提督に会えたのかなぁ」
「それより、何で私まで連れて来たのよ」
冬の高い空にも似た瑠璃色の髪をかき分け、助手席に座る叢雲が言う。
言葉の節には棘が目立ち、あからさまに不機嫌そうだ。
「だってさ、提督のこと気にならないの?」
「アイツ自身はどうでもいいの。ここで問題を起こしたり、ましてや事故を起こして死なれたりでもして、私達にも飛び火するのが嫌なだけ」
「そんなこと言って、さっき物陰から見てたじゃん」
「あれは指定の場所以外で煙草を吸っていたから、注意しようとしただけよ」
「へぇー」
「なにをニヤニヤしているの」
鋭い眼光が私に向けられる。
あんまり揶揄うと後が怖いな。
不意にクルマの音が聞こえてきた。
これだけの交通量の中でも聞き取れる程に、存在感を放つエキゾースト。
おもむろにドアを開けて外に飛び出し、本線側のガードレールに身を乗り出す。
近付いて来る……かなりのスピードだ。
「来たかな……」
「何がよ」
怪訝な顔をして、叢雲が尋ねてきた。
「多分提督と岩崎さん……かな」
「そんなの、分かるもんなの?」
「GT−Rのエンジン……RB26だっけ。あの音って、結構分かりやすいんだ」
「ふーん……」
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