過去ログ - 男「いやァ、もうだめでしょう」
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2:名無しNIPPER
2015/05/17(日) 14:25:21.14 ID:BxsgERTK0
なにもすることができず、ただ夜空とそこらの木々を眺めていたら、いつのまにか朝になっていた。

もうそろそろ、暖かくなってきてもいいころじゃないかと思っていたが、からだは冷めていく一方だった。

たぶん、死ぬなァ。
以下略



3:名無しNIPPER
2015/05/17(日) 14:41:40.54 ID:BxsgERTK0
「医学会の帰りかなにかで」

尋ねると、やはり早口で答える。

「はい。すぐそこに、実家が」
以下略



4:名無しNIPPER
2015/05/17(日) 14:53:45.09 ID:BxsgERTK0
「わたくしも久しぶりの帰省で、帰る前にこのあたりを眺めておきたいと思っていたのですが」

およそ独り言のようなことばに、手当てに集中しながらも、こくこくと相槌を打ってくれている。

「足を滑らせてしまいまして」
以下略



5:名無しNIPPER
2015/05/17(日) 15:03:17.16 ID:BxsgERTK0
「いやァ、もうだめでしょう」

ああ、声が出し難い。

「血ががぶがぶ湧いて、止まりませんな」
以下略



6:名無しNIPPER
2015/05/17(日) 15:13:29.59 ID:BxsgERTK0
その様子を見て、大丈夫です、こらえてください、と言葉をかけてくれたが、応えることもままならない。

血が流れすぎたせいだろうか。ああ、ひどいものだ。

きっと彼は、このあと悔しがるのだろうが、こんなに必死に手当てをしてくれたのだから、文句のあるはずもない。
以下略



7:名無しNIPPER
2015/05/17(日) 15:18:48.17 ID:BxsgERTK0
しかし、いい空である。

風が目に見えるように吹いている。


以下略



8:名無しNIPPER
2015/05/17(日) 15:20:33.12 ID:BxsgERTK0
宮沢賢治作、『眼にて云ふ』を基にしたお話でした。
最後にその詩をどうぞ。


9:名無しNIPPER
2015/05/17(日) 15:21:15.99 ID:BxsgERTK0
     眼にて云ふ

だめでせう
とまりませんな
がぶがぶ湧いてゐるですからな
以下略



10:名無しNIPPER[sage]
2015/05/17(日) 15:38:29.91 ID:2Dl+lWDAO

上手く言えないけれど、素敵だ
凄惨なのに美しく、空虚なのに満ち足りている


11:名無しNIPPER[sage]
2015/05/17(日) 16:27:33.61 ID:keRjcXiIO
乙!


12:名無しNIPPER
2015/05/17(日) 19:30:14.28 ID:BxsgERTK0
HTML化依頼忘れてました・・・すぐ出してきます


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