過去ログ - 長門「ユッキー……私の事を呼ぶならそう呼んで」
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9:名無しNIPPER[saga]
2015/05/17(日) 23:32:35.95 ID:Flc7T4o40


桜はすっかり散って青々とした木々が並木道を飾る、春も半ば。
俺は図書館へと向かっていた。
俺は読書家ではない。どころか、ちょいと難解な絵本でさえ読む気になれない。
そんな俺がわざわざどうして貴重な休みを潰してまでそんなところに向かっているのかといえば、答えは簡単。返却期限を超過した妹の図書を返すためである。
母親がランドセルの奥深くに眠っていたそれを見つけ出した時は既に遅し、当の妹は元気に遊びに飛び出していった後で、
当然の帰結として俺に白羽の矢が立った。解説終わり。



「……やれやれ」



この歳になってお使いまがいのことをするのもさながら、『赤い実はじけた』何ぞ持って駅前を闊歩する虚しさも一入よ。
あいつには、帰って来たら厳しく説教してやらねばなるまい。
今頃友達と健康的に遊んでおろう愚妹を忌々しく思っていると、ふとコンビニに見慣れた顔を見つけた。
休日なのになぜか制服姿のそいつは、機械的に店内を見回し、目標を特定するやこれまた合同演習のごとく規則正しい足取りで近づくと手に取り、レジへ向かう。
会計を済ませ、90度回転。
自動ドアをくぐって来たのは、誰あろう、長門有希その人だった。



「よう」



呼び止めたのに他意はない。本当だ。
ただ、こいつでも飯を食うのだなと当たり前のことに変に感心してしまった(彼女は昼休みにも消える。きちんと食べているのかしらと朝倉が案じていたのを思い出した)。
長門有希はぴたりと足をそろえて立ち止まった。
ロボットのような挙動で顎を上げると、計ったようなタイミングで瞬きをひとつ。


「奇遇だな。買い物か」



ワンテンポ遅れて、かくんと首が落ちる。
その反応から、何となーくだが、顔を覚えられていないんだなーと分かった。



「弁当、買いに来たのか?」



首肯。



「親は?」

「……いない」

「出張とか?」

「……最初から、私ひとり」

「そうなのか」

「……そう」



どういう事情かは知らんが、毎日出来合いとは不摂生極まりないな。だからそんな青白い顔をしているのだろうか。
まるで、そう、月の裏側から来た宇宙人のような……。
そこまで考えたところで長門有希の目が動いた。


「……それ」


そう言って視線を落とした先にはブックカバーにくるまれた某小学校推奨図書。
さすがだな。本を感知するレーダーでも付いてるのか。



「私にそのような機能は搭載されていない」



いや、まじめに返すなよ。
首を傾げられてもな、ジョークだよ、ジョーク。



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