15:名無しNIPPER[saga]
2015/05/26(火) 17:04:28.11 ID:/StSlAX00
憲兵「中は思ったより静かだな」
浜風「美術館という場所は沈黙しているだけで教養が高まった気がするので、わざわざ自分の知性がいかに洗練されているものか声高に言い立てる必要がないですからね」
憲兵「それにしても目当てのものは分かり易いな。人垣ができていやがる」
16:名無しNIPPER[saga]
2015/05/26(火) 17:16:24.04 ID:/StSlAX00
憲兵「鎮守府ごとにハートロックは異なるが、あれはかなり特殊だな。丸い四角形の錠なんて見たことがない」
浜風「あれはこの作品を創った芸術家のオリジナルらしいです。正しく世に二つとない唯一無二の錠です」
憲兵「あれを単品で展示すれば良かったんじゃないか?」
17:名無しNIPPER[saga]
2015/05/26(火) 17:55:30.31 ID:/StSlAX00
憲兵「この場合だと、錠が絵だとすると五十鈴が額になるのか?」
浜風「正確にはあの立て看板も含めて額です」
『ご自由にどうぞ』
18:名無しNIPPER[saga]
2015/05/26(火) 19:08:45.45 ID:/StSlAX00
浜風「電車に老人がやってきて、誰も席を譲らない状況のように沈黙しています」
憲兵「困難な善行より容易い善行の方が時として為されえないということがあるということだ。さて、どれぐらいこれが続くかね」
浜風「小学校の演劇の主役決めに似た空気の重さです。みんなそれを指名されたら喜んで演じるだろうけれど、自ら名乗り出る勇気はない膠着状態です」
19:名無しNIPPER[saga]
2015/05/26(火) 19:36:16.11 ID:/StSlAX00
浜風「拍手が起こっています。私達も拍手しましょう。彼の善意に」
憲兵「一気に和やかな雰囲気になったな」
浜風「しかし、係員が二人目の五十鈴を連れてきて台座に置きましたよ。また沈黙に陥るのでしょうか」
20:名無しNIPPER[saga]
2015/05/27(水) 00:32:19.17 ID:H3WN2z1p0
§
浜風「あれからあの展示は定期的に為されました」
憲兵「そうだな。連日美術館が遊園地のジェットコースター並の人気を得たという異常事態だった」
21:名無しNIPPER[saga]
2015/05/27(水) 00:44:24.03 ID:H3WN2z1p0
浜風「しかし、彼はもう展示をやめるらしいです」
憲兵「どうして?」
浜風「もう必要ないと言っています」
22:名無しNIPPER[saga]
2015/05/27(水) 00:54:00.59 ID:H3WN2z1p0
浜風「いいえ。お金ではないようです」
憲兵「金じゃない?」
浜風「………それと次の目的地はこの道でいいんですか?」
23:名無しNIPPER[saga]
2015/05/27(水) 01:18:44.04 ID:H3WN2z1p0
浜風「良い作品とは模倣される運命にあります。そして、それほど浸透したというなら芸術家がその止まり木に留まる理由もないということです」
憲兵「飢えでやせ細った首元から飛び出ていたものは丸い四角形という珍しい形の錠だった。あんなもの見たことないな」
浜風「餓死していましたね。模倣というのは概してその質が下がっていくものです。二つの点で劣っています」
24:名無しNIPPER[saga]
2015/06/25(木) 02:56:12.19 ID:NCr5qbOP0
憲兵「面倒なことになったな。というかこれはどうするべきなんだ」
浜風「どうしたいですか」
憲兵「取り敢えず死体は回収しなければならん。この錠から持ち主を特定して、そこの提督を不法投棄の罪でしょっぴくか」
25:名無しNIPPER[saga]
2015/06/25(木) 03:09:23.57 ID:NCr5qbOP0
憲兵「じゃあ、一体この死を誰に帰責すべきなんだ。あの芸術家か」
浜風「現状難しいと思います。一応彼は艦娘の生存を保証してましたから」
憲兵「それでも、あんな展示品をしてたら裁かれるだろうよ」
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