過去ログ - 提督「なに? LULLだと?」
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9:名無しNIPPER[saga]
2015/05/26(火) 02:38:41.31 ID:/StSlAX00
浜風「それらはやはりどこまでいっても偽物ですから」

憲兵「意味が分からない。美術館こそ偽物の巣窟だろ?」

浜風「………」
以下略



10:名無しNIPPER[saga]
2015/05/26(火) 02:58:56.45 ID:/StSlAX00
憲兵「これはどういうことだ? いつもは購買の焼きそばパンの棚ほど空っぽなのに、今日はコッペパンほどにぎっしりだ」

浜風「コッペパンですか。そうですね。いつの時代も流行に惑わされる野次馬の中身なんてものは無味乾燥です。売れ残り連中というわけです」

憲兵「美術館の前にどうして百人単位の行列が出来ているんだ!? というかなんだか騒がしい! うるさい! マスコミもいるし、『艦娘も同じ人間だ!』という横断幕を掲げたデモ隊もいるじゃねえか!? どういうことだ! 説明しろ、浜風!」
以下略



11:名無しNIPPER[saga]
2015/05/26(火) 03:25:30.54 ID:/StSlAX00
憲兵「じゃあ何があったんだよ? わざわざ誘ってきたんだ、お前はこの騒ぎを知っていただろ?」

浜風「以前ここで艦娘が芸術作品として展示されたのです」

憲兵「艦娘がか?」
以下略



12:名無しNIPPER[saga]
2015/05/26(火) 13:41:42.82 ID:/StSlAX00
憲兵「それがこの混雑の原因なんだな?」

浜風「そうですね。人気を得たいならば、嫌われ者を手元に置いておくことが良いという例です」

憲兵「それでもこんな正義の怒声が響くには不十分に思える」
以下略



13:名無しNIPPER[saga]
2015/05/26(火) 13:55:33.88 ID:/StSlAX00
憲兵「チェスかい?」

浜風「ええ。チェスです。これ以上とない比喩です」

憲兵「そうか」
以下略



14:名無しNIPPER[saga]
2015/05/26(火) 14:19:13.95 ID:/StSlAX00
憲兵「お? 扉が開いたな。おお、おお。人がなだれ込んでいくじゃないか! ホースの先を細くすれば水は勢いよく出るが、人ごみでも同じだ。扉が狭ければ狭いほど勢いづく。違いは澄んだ水遣りは虹を作るが、澱んだ人ごみは何も作らないということだ」

浜風「しかし、彼らは満足しています。というのも、あんな狭いところを通過するんです、「狭き門より入れ」という美徳を実践している気になって自分の正義を信じて疑わないのですから。彼らにとって最高の美徳は人ごみに揉まれて雑巾のようになることです」

憲兵「瞬く間にあの正義のパレードが吸い込まれていった。酔っ払いの合唱団が消えたから、後に残るのは雀の小さなさえずりの通底音だけだ」
以下略



15:名無しNIPPER[saga]
2015/05/26(火) 17:04:28.11 ID:/StSlAX00
憲兵「中は思ったより静かだな」

浜風「美術館という場所は沈黙しているだけで教養が高まった気がするので、わざわざ自分の知性がいかに洗練されているものか声高に言い立てる必要がないですからね」

憲兵「それにしても目当てのものは分かり易いな。人垣ができていやがる」
以下略



16:名無しNIPPER[saga]
2015/05/26(火) 17:16:24.04 ID:/StSlAX00
憲兵「鎮守府ごとにハートロックは異なるが、あれはかなり特殊だな。丸い四角形の錠なんて見たことがない」

浜風「あれはこの作品を創った芸術家のオリジナルらしいです。正しく世に二つとない唯一無二の錠です」

憲兵「あれを単品で展示すれば良かったんじゃないか?」
以下略



17:名無しNIPPER[saga]
2015/05/26(火) 17:55:30.31 ID:/StSlAX00
憲兵「この場合だと、錠が絵だとすると五十鈴が額になるのか?」

浜風「正確にはあの立て看板も含めて額です」

『ご自由にどうぞ』
以下略



18:名無しNIPPER[saga]
2015/05/26(火) 19:08:45.45 ID:/StSlAX00
浜風「電車に老人がやってきて、誰も席を譲らない状況のように沈黙しています」

憲兵「困難な善行より容易い善行の方が時として為されえないということがあるということだ。さて、どれぐらいこれが続くかね」

浜風「小学校の演劇の主役決めに似た空気の重さです。みんなそれを指名されたら喜んで演じるだろうけれど、自ら名乗り出る勇気はない膠着状態です」
以下略



19:名無しNIPPER[saga]
2015/05/26(火) 19:36:16.11 ID:/StSlAX00
浜風「拍手が起こっています。私達も拍手しましょう。彼の善意に」

憲兵「一気に和やかな雰囲気になったな」

浜風「しかし、係員が二人目の五十鈴を連れてきて台座に置きましたよ。また沈黙に陥るのでしょうか」
以下略



20:名無しNIPPER[saga]
2015/05/27(水) 00:32:19.17 ID:H3WN2z1p0
§

浜風「あれからあの展示は定期的に為されました」

憲兵「そうだな。連日美術館が遊園地のジェットコースター並の人気を得たという異常事態だった」
以下略



21:名無しNIPPER[saga]
2015/05/27(水) 00:44:24.03 ID:H3WN2z1p0
浜風「しかし、彼はもう展示をやめるらしいです」

憲兵「どうして?」

浜風「もう必要ないと言っています」
以下略



22:名無しNIPPER[saga]
2015/05/27(水) 00:54:00.59 ID:H3WN2z1p0
浜風「いいえ。お金ではないようです」

憲兵「金じゃない?」

浜風「………それと次の目的地はこの道でいいんですか?」
以下略



23:名無しNIPPER[saga]
2015/05/27(水) 01:18:44.04 ID:H3WN2z1p0
浜風「良い作品とは模倣される運命にあります。そして、それほど浸透したというなら芸術家がその止まり木に留まる理由もないということです」

憲兵「飢えでやせ細った首元から飛び出ていたものは丸い四角形という珍しい形の錠だった。あんなもの見たことないな」

浜風「餓死していましたね。模倣というのは概してその質が下がっていくものです。二つの点で劣っています」
以下略



24:名無しNIPPER[saga]
2015/06/25(木) 02:56:12.19 ID:NCr5qbOP0
憲兵「面倒なことになったな。というかこれはどうするべきなんだ」

浜風「どうしたいですか」

憲兵「取り敢えず死体は回収しなければならん。この錠から持ち主を特定して、そこの提督を不法投棄の罪でしょっぴくか」
以下略



25:名無しNIPPER[saga]
2015/06/25(木) 03:09:23.57 ID:NCr5qbOP0
憲兵「じゃあ、一体この死を誰に帰責すべきなんだ。あの芸術家か」

浜風「現状難しいと思います。一応彼は艦娘の生存を保証してましたから」

憲兵「それでも、あんな展示品をしてたら裁かれるだろうよ」
以下略



26:名無しNIPPER[saga]
2015/06/25(木) 03:18:10.89 ID:NCr5qbOP0
憲兵「面倒だな。となると、引き取った鎮守府を調べ上げて、この特殊な五十鈴の有無を確認するしかないのか」

浜風「それは随分と大変なことです。本部の許可を得なければならないでしょう」

憲兵「やってやるさ」
以下略



27:名無しNIPPER[saga]
2015/06/25(木) 03:22:22.27 ID:NCr5qbOP0
§

浜風「報告書が提出されました」

憲兵「まさか、あの腰の重い本部を説得して多額の支援金までかっぱらってくるとはな。それで結果は?」
以下略



28:名無しNIPPER[saga]
2015/06/25(木) 03:36:29.49 ID:NCr5qbOP0
浜風「その場の勢いで引き取っただけのところも大きいのでしょう。だから愛着も持てず手放すといったようです」

憲兵「どうだ。罰を与えれると思うか?」

浜風「数が多すぎます。一斉検挙すると鎮守府の機能が停止しかねません。事情の性質から考えてそのリスクには見合わない判断されて、恐らく黙殺されると思います」
以下略



29:名無しNIPPER[sage]
2015/06/25(木) 08:50:26.65 ID:Pvlko3Qc0
最近の出来はがっかりだなぁ……
面白いうちに畳んで欲しかった

ともあれ乙


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