過去ログ - 安部菜々、魔法少女になる。〜PROJECT G4〜
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52: ◆2YxvakPABs[saga]
2015/05/26(火) 22:57:38.96 ID:6BW4cku00

 菜々を押さえているのはありすだ。むしろ、その他には誰もいない。
 菜々の身長は、146センチ。いかにありすが小学生とはいえ、身長141センチと菜々の背に近い上に、魔法少女である彼女から菜々は逃げることが出来ない。

 千佳は、突然の出来事を、混乱するように見ていることしか出来なかった。

 やがて、それを飲み込み、菜々は事切れるように脱力した。
 それと同時に、口元から手を離され、菜々は地面に倒れた。

「ま……不味い……です……」

 今だに口の中に残る後味。甘いような、酸っぱいような、苦いような、クリーミーなような……あまりにマズいそれは、菜々から全てのやる気を奪い去る。
 生ぬるかったのが、不味さに拍車をかけていた。
 水も何もないため、その口をゆすぐこともお口直しをすることも叶わない。

 ただただ、嫌悪感がこみ上げる。
 口に放り込まれたモノの正体がわからないだけに、嫌悪感は増し、不安が募る。

 そんな菜々を見下ろすように、ありすは倒れている菜々を見ていた。

「……いちごジャム入りシチューチーズグラタン、そんなに不味かったですか? 不本意ですけど、まぁ、目的達成ですね」

「いちごジャム入り……シチュー、チーズグラタン……?」

 その名前を聞いて、ようやく口の中に残る妙な後味の説明がついた。
 時折感じた砂のような苦いものは、おそらく焦げだ。
 飲み込んだものが食べ物であったことに、ひとまずの安心感を覚える菜々だが、それはとても食べ物とは思えなかった。
 上手に配合すれば、おいしくなるのかもしれないが、口に入れられたものはどこか説明できない不味さを内包していた。

 食卓に出されれば、間違いなく食べることを拒否してしまいたくなるような。店のメニューとして出せば、それを食べた客は二度とその店に脚を踏み入れなくなるような。
 とにかく、菜々が再起不能に追い込まれるくらいには、強烈な味だった。

 ありすが、素早く千佳の背後に回る。ぐるっと、後ろから千佳の首に腕を回し、まるで人質でも取るように千佳を抱え込んだ。

「あ、ありすちゃん!?」

 突然のありすの謎の行動に、千佳は恐怖を言葉にのせてありすの名を口にする。
 あくまで無表情で、ありすは千佳を抑えていた。

「おとなしくしていてください」

 体の向きを変え、菜々は辛うじて千佳が捉えられた様子を目の当たりにする。

「オンドゥルルラギッタンディスカ……ん゛ん゛ッ! 本当に、裏切ったんですか?」

 いちごジャム入りシチューチーズグラタンのあまりの不味さに、菜々は呂律が回っていなかった。仕切り直して、尋ねる。
 口に謎に物体を放り込まれた瞬間から、薄々橘ありすに騙されたのではないかという疑念が浮かんでいたが、彼女が千佳を捕らえたを見て、裏切られたと確信した。



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