過去ログ - 安部菜々、魔法少女になる。〜PROJECT G4〜
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57: ◆2YxvakPABs[saga sage]
2015/05/26(火) 23:02:12.02 ID:6BW4cku00

 菜々は、『ザ・ウサミンワールド』を展開した。菜々以外の全ての時間が止まる。
 彼女は、ゆっくりとちひろに近づいた。ちひろは、のんきに焼け焦げた化けガニをニコニコとした表情で見ている。

 そんなちひろの目の前までやってきた。菜々は、慎重に手を伸ばした。

『ナナちゃん気をつけて、完全に触れてしまったら彼女の時間も動き出してしまうよ』

「分かってます」

 触るのは一瞬。狙いは、ちひろの持つポーチだ。千佳同様、彼女もこのポーチにアイドルカードを入れているはずだ。
 緊張で手が震える。そして、まさに菜々の手がちひろのポーチに触れようとした、その時だった。


「ふふっ、菜々さんの行動は分かってましたよ」


 菜々は意味がわからなかった。
 ポーチに伸ばした手は、ちひろの手によって遮られている。手首をしっかりと握られていた。
 わからないのは、ちひろが動き出したのが、菜々が彼女に触れる前だったということだ。

 触れていもいない、まだ魔法の限界である17秒も迎えていない。なのに、どうやってちひろはこの全てが停滞する世界で動いたのか。
 やがて、17秒が過ぎ、時間が動きだした。焼け焦げた化けガニが再び徐々に崩れ始める。

「どういうことかわかりませんよね? こういうことです」

 すっと、ちひろは菜々の胸の掌を向けた。その手は、菜々にまるで触れていない。
 だが。

「サイキック・衝撃波っ!」

 ちひろが力を込めると、菜々は後ろに思いっきり吹き飛んだ。崩れかけの化けガニの炭に衝突する。炭は一気にバラバラになり、地面に黒い粉が振りかけられる。
 ちひろの手は一切菜々に触れていなかった。それに、今彼女は「サイキック」と言った。

 この言葉は、さっき菜々を追いかけた魔法少女の1人、堀裕子の言葉だ。口に出すだけなら、誰にだって出来る。だが、今のは明らかに口に出しただけではない。
 現に、菜々はまるで超能力のような力で後方に吹き飛ばされているのだから。

 菜々は、地面を転がりながら、体勢を整えるも困惑した表情を隠せない。

「菜々さん困ってますね。教えてあげましょう。私は、魔法少女になるとき、『アイドルになりたい』と願いました。するとどうでしょう。私は、アイドルそのものということになったのです。つまり、私=アイドル。そして、アイドルは魔法少女になります。アイドル=魔法少女。ということは、私=魔法少女、です」

「まさか、全ての魔法少女の力を使えるとか、そんな笑えない冗談を言うつもりじゃないですよね?」

「さっすが菜々さん。いい勘してますね。そうです。その笑えない冗談ですよ。アイドルそのものとなった私は、全ての魔法少女の力が使えます。まぁ、使えると入っても、せいぜいオリジナルの20〜30%しか引き出せないんですけどね。『そのまま』では」

 でも、とちひろは言葉を紡ぐ。

「アイドルカードを使うことで、私はその魔法少女の力を100%引き出すことが出来ます。今までの卯月ちゃんのように」

 ちひろは、ずっと卯月として行動していた。つまり、あれが本来の卯月の実力と見ていいのだろう。
 認めたくはないが、なるほど、と菜々は思った。
 それなら、これまでのことに説明がつく。『ザ・ウサミンワールド』内で動けたのは、彼女もまた、菜々と同じ魔法を使ったということだ。

 正確には、ちひろは、『サイキック・予知』で菜々の行動をあらかじめ知り、杏の魔法である『働かなくて済む魔法』で、菜々の腕を掴むという結果を先取りする。そして、それを可能にしたのが菜々の魔法だ。
 ちひろの魔法の利点は、たとえ2割程度の力しか使えなくても、こうしてコンボで使用することが出来る点だ。



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