431:名無しNIPPER[sage saga]
2015/12/13(日) 01:41:29.83 ID:ftiT5yXu0
「……本当は、違うんですよね。……怖いんだ。今の弥生殿を認めてしまう事で、二人の思い出がなくなってしまうことが」
卯月「ち、ちが……」
「そして、今まで遠ざけて傷つけたのに、今更仲良くすることなんてできない。そんな資格なんてないとも思っている」
卯月「ちがう!ちがうちがうちがう!卯月は、卯月は……!」
卯月ちゃんの体が震え始め、瞳に涙に滲む。
彼女は苦しんでいる。今の弥生ちゃんと昔の弥生ちゃんの乖離に、それを認められない自分自身に、酷い事をしていると思っていても止められない自分に。
そんな彼女を嘘で騙す。嘘を受け入れて貰う。それはとても、とても惨い事に思えた。でも、やるしかない。
「それでは卯月殿。一つ、聞かせて下さい。……貴女はこれから弥生殿とどうなりたいですか」
卯月「どう……って……」
「今まで通り、傷付け合う関係であり続けますか。常に遠ざけ、孤独に泣こうが、貴女に助けを求めようが、知らぬ顔で負い目を感じながらずっと。……今度こそ彼女が一人水底に沈む時まで」
卯月「……沈、む……」
青ざめた表情で卯月ちゃんは声を震わせる。きっとその姿を想像している、あるいは反芻しているのだろう。
彼女は一度弥生ちゃんを失くしているのだから。……そんな絶望的な光景に希望の糸を垂らす。
「それとも、もう一度昔の様な関係に戻りたいですか。共に笑い合えていた頃のように」
卯月「……でも……」
「弥生殿も、それを望んでいます」
ずっと傷つけられながらも、弥生ちゃんは今でも卯月ちゃんと仲良くすることを望んでいる。それは事実だ。
そしてその事実は卯月ちゃんにとって希望の糸でもある。
卯月ちゃんが信じられないという表情で僕を見る。それに答える為に、僕はゆっくりと首を縦に振った。
……後は詰めだ。
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