432:名無しNIPPER[sage saga]
2015/12/13(日) 01:43:55.16 ID:ftiT5yXu0
「……もう一度聞きます。卯月殿、貴女はどうしたいのですか。どうするべきではなく、貴女がやりたい事を教えて下さい」
卯月「……卯月は……卯月、は……」
顔を伏せ、卯月ちゃんは唇を固く引き結ぶ。
自分の心を守る為の弥生ちゃんが別人として扱う建前。
本人と認め再び昔のように戻りたいという本心。
その二つに卯月ちゃんは揺れている。……卯月ちゃんは本心を選んでくれるだろう。これ見よがしに希望の糸を垂らしたのだから。
それを掴みとってくれなければ、卯月ちゃんと弥生ちゃんの別離は決定的なものになってしまうかもしれない。
このやり取りは自分の気持ちの確認だ。さまざまな質問を通して僕は彼女に意思の確認をさせた。それでいて尚、別離の路を選ぶとしたならば、それはかなり強固な意志となってしまうだろう。
そして恐らく、それはよっぽどのことがない限り、覆すことは無い。そうなってしまっては打つ手は限りなく少なくなる。
祈るように僕は、卯月ちゃんが自分の本心を取ってくれることを願い、待った。
しばらくの間の後、卯月ちゃんは声を震わせながらも、ハッキリと言い放つ。
卯月「また、またやよちゃんと……仲良く、したい」
……言った。言ってくれた。
彼女の本当にやりたい事を、彼女の本心を。
その事について安堵を覚えると共に嬉しく思う。卯月ちゃんが苦しみから解放されることが出来たのだから。
……だけどこれで彼女は僕たちの嘘を受け入れることになった。
自分でやってしまった事だ。何を言う資格なんかないけれど、やはり……悲しい。
そんな感情を胸に押し込め、僕は卯月ちゃんに笑いかける。
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