過去ログ - モバP「赤いまゆ」
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1:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 17:56:07.10 ID:E5S6rm4f0
新しいイベントが始まった。

人はSRを獲得するためふるって競うが、おれの求めるSRはない。

おれはNとRが多くを埋めるアルバムをじっくりと眺めつづける。

こんなにたくさん所有しているのに、嫁のSRが一つもないのはなぜだろう? ……と、何万遍かの疑問を、また繰り返しながら。 

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2:名無しNIPPER[sage]
2015/06/07(日) 17:57:23.10 ID:VEehVEv90
なんかホラーっぽいタイトルだな


3:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 17:57:45.53 ID:E5S6rm4f0
わけもなくコンビニに行ってみると、そこには時折モバコインカードなんかが売っていて、おれは課金したくなった。

カードは横目でおれの顔をにらみながら、兄弟、課金しようよ。

全くおれも課金したい。
以下略



4:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 17:58:49.69 ID:E5S6rm4f0
おれは毎日ゲームをプレイしている。

プレイするのは愛でるためだ。

愛でるためには嫁のSRがいる。
以下略



5:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:00:09.07 ID:E5S6rm4f0
ふと思いつく。

もしかするとおれは何か重大な思いちがいをしているのかもしれない。

嫁のSRがないのではなく、単に手に入れるのを忘れてしまっただけなのかもしれない。
以下略



6:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:01:21.07 ID:E5S6rm4f0
振り返ってこちらを向いた親切そうなちひろの笑顔。

希望の風が心臓の近くに吹き込み、それでおれの心臓は平たくひろがり旗になってひるがえる。

おれも笑って紳士のように会釈した。 
以下略



7:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:02:43.73 ID:E5S6rm4f0
おれは説明しようとして、はたと行き詰まる。

なんと説明すべきかわからなくなる。

おれが無課金主義者であること、そんなことはこの際問題ではないのだということを、ちひろにどうやって納得させたらいいだろう?
以下略



8:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:05:32.05 ID:E5S6rm4f0
「返事がないということは、存在しないということですか。」 

「当たり前でしょう? だって、あなたは課金してないんですから。」 

「それがなんだっていうんです? 無課金だからって、まゆのSRが手に入らないとはかぎらない。そうじゃないですか。」 
以下略



9:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:07:06.29 ID:E5S6rm4f0
だが、なぜ……なぜすべての嫁のSRが誰かのものであり、おれのものではないのだろうか?

時たまおれは錯覚した。

嫁のRや他のSRが嫁のSRだと。
以下略



10:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:08:48.60 ID:E5S6rm4f0
では、トレードはどうだ。

むろんけっこう。

もしそれが本当にできるのであれば、おれにそれだけの資産があれば……おれはわずかな希望を捨てず探し続けた。
以下略



11:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:10:58.73 ID:E5S6rm4f0



……つまりおれは、頑迷な愚か者であったということか? 

以下略



12:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:12:06.85 ID:E5S6rm4f0
イベントは進む。

おれは眺めつづける。 


13:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:13:08.45 ID:E5S6rm4f0
嫁……消えうせもせず、変わりもせず、おれの心を掴んで放さないもの。

手に入れるための手段、あるいは上位報酬、あるいは月末ガチャ……。

おれは眺めつづける。
以下略



14:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:14:22.82 ID:E5S6rm4f0
おや、何だ? 

その時おれはなんともいえない違和感を覚えた。

何かがおかしい。
以下略



15:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:15:50.17 ID:E5S6rm4f0
コトンと靴が、足から離れて地面に落ち、おれは事態を理解した。

地軸がゆがんだのではなく、おれの片足がなくなっているのだった。

時がたつにつれて、おれの足がどんどんなくなっていった。
以下略



16:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:17:26.24 ID:E5S6rm4f0
もうこれ以上、一歩も歩けない。

途方にくれて立ちつくすと、同じく途方にくれたもう片方の足、腰、腹……。

また、腕、肩、胸が次々と細かくなって画面に吸い込まれていった。
以下略



17:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:19:01.08 ID:E5S6rm4f0
後に一枚のSRが生まれた。 


18:名無しNIPPER[sage]
2015/06/07(日) 18:19:15.41 ID:aF6PRV4nO
安部公房の中でも好きな話だ


19:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:20:15.36 ID:E5S6rm4f0
ああ、これでやっと愛でられるのだ。

これだけは確実に他の誰でもない、おれのものだ。

だが、嫁のSRが生まれても、今度は愛でるおれがいない。 


20:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:23:39.38 ID:E5S6rm4f0
画面の中で時がとだえた。

外界は移り変わってゆくが、画面の中はいつまでも変わらず、同じ景色がつづいている。

どのくらいたっただろうか、彼はSRとなったおれを、月末ガチャで引きあてた。
以下略



21:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:26:01.96 ID:E5S6rm4f0





以下略



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