6:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:01:21.07 ID:E5S6rm4f0
振り返ってこちらを向いた親切そうなちひろの笑顔。
希望の風が心臓の近くに吹き込み、それでおれの心臓は平たくひろがり旗になってひるがえる。
おれも笑って紳士のように会釈した。
7:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:02:43.73 ID:E5S6rm4f0
おれは説明しようとして、はたと行き詰まる。
なんと説明すべきかわからなくなる。
おれが無課金主義者であること、そんなことはこの際問題ではないのだということを、ちひろにどうやって納得させたらいいだろう?
8:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:05:32.05 ID:E5S6rm4f0
「返事がないということは、存在しないということですか。」
「当たり前でしょう? だって、あなたは課金してないんですから。」
「それがなんだっていうんです? 無課金だからって、まゆのSRが手に入らないとはかぎらない。そうじゃないですか。」
9:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:07:06.29 ID:E5S6rm4f0
だが、なぜ……なぜすべての嫁のSRが誰かのものであり、おれのものではないのだろうか?
時たまおれは錯覚した。
嫁のRや他のSRが嫁のSRだと。
10:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:08:48.60 ID:E5S6rm4f0
では、トレードはどうだ。
むろんけっこう。
もしそれが本当にできるのであれば、おれにそれだけの資産があれば……おれはわずかな希望を捨てず探し続けた。
11:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:10:58.73 ID:E5S6rm4f0
……つまりおれは、頑迷な愚か者であったということか?
12:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:12:06.85 ID:E5S6rm4f0
イベントは進む。
おれは眺めつづける。
13:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:13:08.45 ID:E5S6rm4f0
嫁……消えうせもせず、変わりもせず、おれの心を掴んで放さないもの。
手に入れるための手段、あるいは上位報酬、あるいは月末ガチャ……。
おれは眺めつづける。
14:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:14:22.82 ID:E5S6rm4f0
おや、何だ?
その時おれはなんともいえない違和感を覚えた。
何かがおかしい。
15:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:15:50.17 ID:E5S6rm4f0
コトンと靴が、足から離れて地面に落ち、おれは事態を理解した。
地軸がゆがんだのではなく、おれの片足がなくなっているのだった。
時がたつにつれて、おれの足がどんどんなくなっていった。
16:名無しNIPPER[saga]
2015/06/07(日) 18:17:26.24 ID:E5S6rm4f0
もうこれ以上、一歩も歩けない。
途方にくれて立ちつくすと、同じく途方にくれたもう片方の足、腰、腹……。
また、腕、肩、胸が次々と細かくなって画面に吸い込まれていった。
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