90: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/20(土) 23:19:54.00 ID:pYHYo9LkO
気持ちを切り替え、ワードプロセッサで企画書を開いた。
ライブフェスティバル開催企画書――まだ必要事項をいくつも満たせていない、紙面の半分が真っ白の書類。
91: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/20(土) 23:21:10.01 ID:pYHYo9LkO
企業活動がそこそこの規模になってくると、一旦、発展が鈍化する。
まあ、どの業種にも共通して訪れる成長の踊り場だ。これを打破するためには、何らかの起爆剤が欲しい。
それが今回企画中の、他事務所と共同で開催する予定のライブフェスティバルなのだが。
92: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/20(土) 23:22:01.60 ID:pYHYo9LkO
昨今露出の増えてきたグループとはいえ、現在の成績では不釣り合いなレベルの大資本へと。
元々所属していたところも、そして移籍先も、ともに黒い話の絶えない事務所。
アイドル自身によるトップセールス――
93: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/20(土) 23:22:51.23 ID:pYHYo9LkO
基本的に芸能界なんぞは、黒い欲望の渦巻く魔窟。
生き抜くために人脈―コネ―やおべっかを駆使するが、最後は結局カネ頼み。それが無理ならカラダだ。
談合、癒着、贈収賄、上納、薬物汚染。
94: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/20(土) 23:25:20.87 ID:pYHYo9LkO
気の乗らない思考を巡らせながら、億劫にキーボードを叩いていると、少女が風呂場から出てくる気配がした。
存外に時間が経っていたらしい。時計を見ると三十分ほどかけてゆっくり暖まったようだ。
密閉された室内に、ドライヤーの音が大きく響く。
95: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/20(土) 23:26:40.30 ID:pYHYo9LkO
「こんなとこまで来て仕事してるの?」
髪を乾かし、バスローブを身に纏った少女が、テーブルを挟んだ向かいから問うた。
もうそろそろ済ませられるところなので、僕は短く首肯するだけ。
96: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/20(土) 23:27:46.55 ID:pYHYo9LkO
彼女の動作で漂う石鹸の香りが、ほのかに辺りを染める。
テーブルに置かれたものは、高校一年の教科書と問題集、そしてルーズリーフの束。
それらには『RIN』と書かれており、僕はこのとき初めて、眼前の女子高生の名前を知ることとなった。
97: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/20(土) 23:28:43.95 ID:pYHYo9LkO
「……なに?」
僕の予想だにしない行動だ。まさか真面目に課題を進めるとは、全く以て意外としか云いようがない。
しかも驚くべきことに、手にしているのは、やや高度な設問だ。
98: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/20(土) 23:30:10.44 ID:pYHYo9LkO
てっきり不良少女という先入観から、学業は放棄しているものと思い込んでいた。
これじゃ、むしろ優等生の部類ではないか。
彼女は、半ば社会を小馬鹿にしたような眼と口調で、空気を押し出すように語る。
99: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/20(土) 23:31:45.70 ID:pYHYo9LkO
表向き勤勉な者の非行ほど、手を焼くものはない。
腹立たしいはずの仕種なのに……その表情から憐憫を感じてしまうのは何故だろう?
「ちょうどいいや、仕事終わったんなら勉強教えて。高校の数学くらいわかるでしょ?」
100:名無しNIPPER[sage !蒼_res]
2015/06/20(土) 23:34:54.75 ID:pYHYo9LkO
今日はここまでにします
明日と月曜は本業のフェスで飲み合いになりそうなので
更新できたらする、というスタンスにさせてください
それでは
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