161:名無しNIPPER[saga]
2015/06/23(火) 12:11:46.77 ID:PahCcs/DO
「だったら、こうして歩くのも無駄じゃないかもね」
「そうだな。その……」
ここでも珍しく、ライは口ごもった。なんだか逡巡している。いつもの冷静な彼らしく無い。普段なら割とはっきり思った事を言うからだ。それで困らせられた経験は多い。
「……これからも、お願いしたいんだが」
なんで不安そうなのか。先ほどの一件で嫌われたとでも勘違いしたのかもしれない。こちらが勝手に怒っただけで、彼は何一つとして悪くないのに。
「もちろん。お世話係主任ですもの」
カレンは笑顔で、生まれた溝を飛び越えた。俄然、彼の記憶に興味が湧いたのもある。しかし、きっと一番の理由は──
「……そうか。良かった」
トウキョウ租界で見つけた小さな居場所。そこに、もう少し居たかったからだろう。
「ところで、いつの間に出世したんだ」
「お世話係主任のこと? この間の生徒会だけど」
「僕に何の告知も無かったんだが」
「だって、もう生徒会全員がお世話係みたいなものだし……」
「いや……まず、その世話係という名称に不服がある」
これまた珍しい。彼が不満を言うとは。
「? どうして?」
「生徒会室にアーサーという猫がいるだろう」
「いるわね」
たまにカレンも餌をあげている黒猫だ。スザクが連れてきて、そのまま住み着いてしまった。
「アーサーの世話係主任はスザクらしいじゃないか」
「……ああ。なるほどね」
合点がいった。猫と同等の扱いを受けている事が不満だったのだろう。
「私は良いと思うけど」
カレンは笑った。空は蒼く澄み切っている。そういえば、彼といる時はいつも晴天だ。
それが、なんとなく嬉しいと思った。
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