284:名無しNIPPER[saga]
2015/07/03(金) 02:52:46.42 ID:XSwai4zDO
「わ、私……。ごめんなさい。かっこ悪いとこ、見せちゃったわ」
今の私を見ないでくれとばかりに、カレンは背を向ける。
「格好悪いなんてことはない」
自分でも分かるくらい感情の薄いライからしてみれば、こういった顔を持っている事は羨ましいとすら思える。例えそれが、怒りや憎しみだとしても変わらない。
なぜならそれは、紛れもないカレン自身の心の色だからだ。彼女には確かな歴史があって、それから繋がる今がある。どうしてそれを貶めることができようか。
「君が普段、苛ついている理由が少し分かった」
「苛ついてる? 私が?」
この二週間余り、彼女を見続けて分かった事がある。カレンが日頃、他人──ブリタニア人と距離を置いているのは、きっといま言っていた事と無関係ではないのだろう。
「学園を歩くとき、街を歩くとき、人とすれ違うとき、たまに眉間にしわを寄せていたから」
「…………」
カレンは背を向けたまま、自身の顔を触った。確認しているのだろうか。
「租界の華やかさも、ゲットーの有り様も……君からしてみれば心を痛めるものなんだろう」
ライはゲットーを眺めながら言った。乾いた風が頬を撫でる。
カレンはおそらく、トウキョウ租界の事を好ましく思っていないはずだ。にも関わらず、いつも自分を案内してくれていた。
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