320:名無しNIPPER[saga]
2015/07/13(月) 00:11:38.94 ID:LDywV5nDO
歩み寄る。距離は三〇メートルほど。六時の方向から接近。完全に背後をとった。
「ルルーシュか」
すぐに気づかれた。
「……驚いたな」
言葉とは裏腹に、ルルーシュは動揺した素振りを見せなかった。代わりに苦笑を浮かべて
「気づかれないと思ったんだがな」
「足音で人を判別出来るというのは、どうやら本当のようだ」
ナナリーの入れ知恵か。近頃、ライはルルーシュの最愛の妹と頻繁に会っている。兄としては複雑な気分だった。
「屋上には良く来るのか」
手すりに肘を預けて尋ねる。穏やかな風が、ルルーシュの黒い髪を揺らした。
「いや、ここに来たのは単なる気まぐれだ。君の睡眠を邪魔したくないし、戻るよ」
気まぐれとは珍しい事を言う。ライは理詰めで動く人間で動くと思っていた。そして、ルルーシュは自嘲の笑みを浮かべ、
「あのな。俺だって、いつも睡眠欲に駆られているわけじゃない」
真っ赤な嘘だった。ルルーシュはここへ昼寝しに来たのである。ただ、ここで本当の事を告げれば、それがナナリーの耳に入ってしまう。ライはナナリーに甘い。ねだられたら、口座の暗証番号ですらあっさりと言うだろう。それくらいに甘い。
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