375:名無しNIPPER[saga]
2015/07/29(水) 19:12:03.74 ID:RvzOFB6DO
夢を見ている。
(カレン、遅刻するわよ。ほら、ナオトも)
いつものように寝坊して、母の声で起こされる。仕掛けていたはずの目覚まし時計は、いつの間にか床に転がっていた。この時計が奏でるけたたましい音より、下の階から聞こえる母の呼びかけの方が、よほど効果があるようだった。
なんとか布団から這い出して、廊下に出る。焼いた塩鮭と味噌汁の匂い。起きたばかりなのに、どうしようもない空腹感が襲ってきた。
隣の部屋からは既に身支度を整えた兄が出てきて、こちらを見た。くすりと笑われる。仕方がないなと近づいてきて、
(また寝癖ついているぞ)
そう言って、頭を撫でてくれた。それがたまらなく嬉しくて、抱きついた。兄の首に両腕をかけ、体を預ける。居間まで運べという合図だ。
そのまま下の階に降りて、母に朝の挨拶をする。
(階段くらい自分で降りなさい。ナオトも、あまり甘やかさないの)
はーい、と空返事をする。既に意識は食事に向いていた。隣の席では兄が困ったように頬を掻いている。
(いただきまーす)
(はい、どうぞ)
家族三人が揃って、ようやく朝食が開始された。鋭敏な嗅覚が嗅ぎつけた通り、炊きたての白米と香ばしい焼き鮭、わかめと豆腐の味噌汁が湯気を立てている。簡単なサラダも合ったが、眼中になかった。
まずは味噌汁を一口。おいしい。出汁の取り方が神がかっている。暖かい液体が喉を通った事で、やっと頭が動き出した。
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