378:名無しNIPPER[saga]
2015/07/29(水) 19:16:57.41 ID:RvzOFB6DO
(ま、妹がこんなにべったりじゃな)
言葉とは裏腹に、兄はいつもこうやって自転車で送ってくれる。風に乗って、大好きな匂いが流れてきた。腰に手を回して背中に抱きつく。確かな温もりに顔をうずめた。
(そろそろ兄離れしてもらわないとな……。ご近所さんの視線が痛い)
そんな提案を「やだ」の一言で切り捨てる。ひときわ強く抱きしめた。ぐりぐりと大好きな背中に額を押し当てる。兄の運転する自転車はゆっくりと動いていく。
──いつもの日常だ。
幸福な時間はたった五分ほどで終わった。通っている小学校付近でおろしてもらい、兄にしばしの別れを告げる。名残惜しいのは気のせいではないだろう。
下駄箱で内履きに履き替え、教室へ急いだ。すれ違う先生から走らないでと注意を受けて、駆け足から早歩きへの変更を余儀なくされた。
三年生の教室へ到着すると同時に、チャイムが鳴る。仲の良い友達に挨拶しながら席についた。
そうして授業を受けて、友達とお喋りをして、給食を食べて、男子に混じって昼休みにバスケットボールをして、また授業を受けて、一日が終わった。あっという間だった。
下校の時間になり、机の中を漁っていると──結局、道徳の教科書はこの中にあった──友達の女子から声をかけられた。
(そういえば、あの話ってどうなったの?)
あの話? と首を傾げる。
1002Res/860.00 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。