450:名無しNIPPER[saga]
2015/08/15(土) 17:22:13.83 ID:96BNk38DO
照準システムが死んでいるせいでろくに狙いも付けられない。パッシブ・センサーが破壊されているため、敵から狙われていても気づけない。お粗末な電子兵装では敵の照準をずらすことも出来ない。
驚いた。まったくの無防備だ。
加えてこの鈍重さだ。ナイトメアの命である機動性を、操縦者が自ら殺してしまった。KMFは最強の陸戦兵器だが、これではただの棺桶と変わらない。
<無頼>は尚も移動を続けている。脚部のランドスピナーによる高速走行ではなく、あくまでも徒歩だった。股関節の駆動系がおかしいのか、歩くたびにギシキシだのがしゃがしゃだの間抜けな音を立てる。
敵の<サザーランド>はゆっくりと近づいてきた。滑らかな動き。こちらとは雲泥の差だ。倒したはずの<無頼>が動いていることを疑問に思いながらも、しっかりとどめを刺す気のようだった。
こんな状況にも関わらず、ライはコンソールを叩いていた。右腕部の肩関節、肘関節、さらに手首をロック。まだ機体の機能を制限する気らしい。カレンはその様子をぼんやりと眺めていることしか出来なかった。
<サザーランド>は両腕でしっかりとアサルト・ライフルを構え、こちらに狙いを付ける。黒い砲身が鈍い輝きを放った。
本当ならここで警報が鳴り、ロックオンされた事を知らせてくれるのだが、それは無かった。頭部が損傷しているためだ。相手の照準を狂わせてくれる電子兵装も息をしていない。
「…………」
カレンはモニターに映る空を見上げた。雲は切れ、僅かに青空が覗いている。
私はこれから死ぬのだ、と確信していた。夢半ばで力尽きることの無念さがあった。あそこでハンバーグをキャンセルしておけば、という後悔もあった。
だが一番強い感情がライを巻き込んでしまう事に対する申し訳なさだったことに、カレンは不思議な安心感を覚えていた。
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