454:名無しNIPPER[saga]
2015/08/15(土) 17:30:13.56 ID:96BNk38DO
「…………」
五秒ほど待って、ライは目を開けた。
「前進する。整備不良が原因だと思うが、バランサーとスタビライザーの調子が悪い。かなり揺れるから注意しろ」
そう言って、脚部に装備されている一対の車輪──ランドスピナーを展開する。ライの声からは感情が窺えず、ナイトメアが喋っているように思えた。
「わ、分かった」
やはり怖い。カレンはライから目を背け、モニターに視線を注いだ。<無頼>は先ほどより遥かに早く進んでいく。揺れは強かったが、気にしないように注意した。
倒した<サザーランド>の横を抜ける。撃破と同時に脱出機構が作動したため、コックピットブロックが丸々無くなっていた。
もう少し進んだ所で、ライはまたも<無頼>を止めた。T字路の突き当たり、左右の曲がり角から二体の<サザーランド>が現れた。あのまま進んでいたら挟み撃ちにあっていたかもしれない。
「また敵……!?」
しかも二体。勝てるはずがない。<無頼>の主兵装であるアサルト・ライフルは弾切れだし、固定武装のスラッシュ・ハーケンはそもそも動かない。完全に丸腰の状態で<サザーランド>を二機も相手にするのは不可能だった。
「駄目、なの……?」
去ったと思っていた絶望感が再びやってくる。
ライを見る。彼に諦めた様子はなかった。先ほどの存在感は消えていない。むしろ、強くなっていた。
(どうして……?)
分からない。なにも分からなかった。彼が何者なのか、何を考えているのか。味方なのか敵なのかさえ、分からなくなっていた。
カレンの知らない表情をしていたからだ。
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